はじめに
コンビネーションメーターに以下のようなオイルランプが点灯する故障は、2種類考えられます。
- オイルプレッシャースイッチの故障
- オイル圧力不足
オイルランプがつくとまず最初にエンジンオイルの量を確認しますが、オイルが入っていると「オイルプレッシャースイッチが故障しているのか?」「油圧が足りてないのか?」どちらか悩んでしまうと思います。
とりあえずオイルプレッシャースイッチが正常か判断出来ればオイル圧力不足だけを点検すればこの故障は解決します。
ここでは整備マニュアルに添った正確な点検と整備マニュアルにない簡易的な点検方法の両方をご紹介しますので、機能、仕組み、修理時間短縮に役立てて下さい。
目次
オイルプレッシャースイッチの役割
エンジンのシリンダーヘッドに付くエンジンオイルの圧力を検出するセンサーです。
エンジン内部のパーツはエンジンオイルによって潤滑されています。
エンジンパーツの種類- ピストン
- カムシャフト
- クランクシャフト
- バルブ
- タイミングチェーン
以上のほかにもオイルで摩耗を抑えたりするパーツは多数ありますが、大きなパーツですとこの5つです。
ピストンやカムシャフトはエンジンの中央から上になるので、オイルポンプでオイルを送らなければ上には上がれません。
上の画像はカムシャフトやバルブです。オイルポンプが作動することでエンジン上部のパーツにもオイルが行き届き潤滑されます。
可動するパーツでは潤滑されないと傷が付き、クリアランスが変化してパーツの動きが悪くなったり、最悪の場合はロックしてしまいます。
その潤滑オイルがしっかり送られているのかを調べているのがオイルプレッシャースイッチです。
オイルプレッシャースイッチの仕組みと場所
以下、参考データはトヨタ車のエンジン型式3SZです。
パーツ詳細取付位置 | エンジンのシリンダーブロック横に装着。下の画像参照。 |
警告灯 | 異常時は赤色のオイルランプが点灯 |
正常な作動 | キーONでメーター内にオイルランプが点灯する、エンジン始動後消灯。 |
異常時 | キーONでオイルランプが不灯もしくはエンジン始動後に点灯。 |
作動圧力 | アイドリング 39kPs以上 |
この画像のように装着場所はシリンダーブロック側面になります。
一般的にエンジン側面の中央付近についていますが、ノックセンサーも同じような場所についているので間違えやすいです。
ノックセンサーとは形状も似ているので見た目ではわかりませんが、ノックセンサーはオイル通路には付かないのでオイル漏れなどはありません。
センサーからオイルが漏れていればオイルプレッシャースイッチで間違いありません。
オイルプレッシャースイッチはエンジンオイル圧力の数値を測るのではなく、一定の圧力以上になったときに接点が離れてOFFになります。
エンジンのオイルポンプが回転するとオイル圧力が上がり、オイルプレッシャースイッチのスイッチ部分が押されてOFFされます。
下の画像はオイルプレッシャースイッチのエンジンに入る箇所です。
穴の中にオイルが流れると内部の弁が押されてスイッチがOFFされます。
簡単に作動を説明しますとエンジン停止中はスイッチがON、エンジン稼働中はスイッチがOFFです。
下は整備マニュアルの1部ですが、回路図の水色の枠内の左から2番目がオイル警告灯(発光ダイオード)です。
発光ダイオードのマイナス側がオイルプレッシャースイッチになっており、回路図ではOFFになっています。
ONになるとアースされ、発光ダイオードに電流が流れメーター内のオイルランプが点灯します。
よってオイルプレッシャースイッチは何も負荷がかかっていない時にONになってオイルランプが点灯して、エンジン始動後にオイル圧力がかかった時にOFFになってオイルランプが消灯することがわかります。
オイルランプ警告灯の故障の症状
他に異常がなくオイル警告灯だけ点く場合
- オイルプレッシャースイッチの故障
オイル警告灯が点いたり消えたりする場合
- オイル不足が傾きで時々オイル液面が上昇し解消される
- オイルポンプの圧力不足。回転を上げると解消
- オイルプレッシャースイッチの接点が汚れてる
オイル警告灯とガラガラ異音がする場合
- オイルポンプのベアリングの故障
- オイルポンプの羽の故障
- エンジンオイル不足でクランクシャフトベアリングが削れている
- オイル圧力不足でカムシャフトが削れている
- 汚れでオイル通路が詰まり、稼働部分が正常に動かない
オイルポンプはクランクシャフトと連結されている車が多く、エンジン稼働中は常に潤滑されている。エンジン回転よってオイルを流す圧力が上がる。
オイル警告灯が点いてガラガラ音がでている時はエンジンのオーバーホール修理になる可能性が高いです。
修理費用は30万円~になるケースが多いので、警告灯が点いた時にすぐに点検に出して対処して下さい。
エンジン警告灯も点灯してる場合
- オイル不足や圧力不足でタイミングチェーンがずれて進角異常になっている。
- オイル不足や圧力不足でVVTバルブが進角で固定されている。
- オイル不足や圧力不足でOCVが固着してVVTを進角させている。
※OCVはオイルコントロールバルブ。オイル通路を変化させてVVTを進角、遅角をさせる重要な部品。
VVTバルブはオイル圧で進角、遅角をしていますが、アイドリングのような低回転で進角してしまうとオーバーラップが大きくなり、エンジン爆発が不安定になってしまいます。
オイル不足や圧力不足になると「VVT内部の仕切りが折れる」「OCVが固着する」などで進角、遅角がランダムに発生してエンジン不調になる。
オイルプレッシャースイッチの点検方法と修理費用
オイルプレッシャースイッチに異常がなければエンジンのオイルポンプかエンジンオイル通路の詰まりが考えられます。
ですのでオイルプレッシャースイッチの点検をすることで警告灯が点灯する原因を追求する事が出来ます。
オイルプレッシャースイッチの抵抗値の見方
単体点検で抵抗を測ります。上でご紹介した基準の抵抗値と新品のオイルプレッシャースイッチの抵抗値を比較しました。
基準の抵抗値キーON | 1.1Ω |
アイドリング中 | ∞Ω |
アイドリング中は正常で10kΩ以上でしたので基準値内ですが、キーONは1Ω以下なのに1.1Ωでした。
これはサーキットテスターの誤差です。プローブ同士を繋げた時の抵抗値が0.2Ωあったので実際は0.9Ωとなり、こちらも基準値内です。
オイルプレッシャースイッチは圧力数値を測っているわけではなく単純なスイッチです。
キーONでは「導通あり」エンジン始動後のアイドリング中では「導通なし」が正常だと思ってもらえれば大丈夫です。
以下はオイルプレッシャースイッチの内部弁を細い棒を使って押した所です。
導通なしになりました。この点検でオイルプレッシャースイッチが異常か判断できます。
棒で内部弁を押す点検は整備マニュアルには載っていません。
内部弁を傷つけたり変形させてしまうとオイルプレッシャースイッチを故障させてしまうので、点検する場合は先端の柔らかな棒で優しく押すようにして下さい。
オイルプレッシャースイッチが正常だった場合、
- オイルポンプの故障
- オイル通路の詰まり
この2つが考えられますが、どちらも10万円以上の高額修理になる事が多いです。
VVTバルブの数値も見る
診断機でエンジンのデータモニターが見れますが、そこでVVTとOCV数値を見てもオイルプレッシャースイッチの故障か実際にオイル圧力不足か判断出来ます。
数値が基準値から外れている場合、オイル圧力が異常か、VVT本体もしくはOCV本体の異常が考えられます。
しかし、VVTやOCV本体の故障でオイルランプ警告灯は点灯しないので、オイル圧力が原因だと推測できます。
オイルプレッシャースイッチの交換費用
こちらは参考価格ですオイルプレッシャースイッチ | 1000円 |
交換工賃 | 3000円 |
合計 | 4000円 |
よくある質問
Q:レベルゲージの下限位置の量だとオイルランプは点灯する? |
A:下限程度でしたらオイルランプは点きません。レベルゲージ先端にもオイルが付着しないほど少ないと点灯します。 |
Q:オイルランプが点いたまま走っても大丈夫? |
A:オイルプレッシャースイッチの故障しているのでしたら大丈夫ですがオイル圧力が本当にない場合はエンジン本体が故障してしまう事もあるのですぐに点検してもらってください。 |
Q:オイルプレッシャースイッチが故障したらどうなる? |
A:オイルランプ警告灯が点灯します。オイルプレッシャースイッチが故障しても他の故障を誘発することはありませんが、そのまま乗り続けるとオイル不足状態に気が付かないなど、重大な故障を防ぐためのヒントを見落としてしまうリスクがあります。 |
色々な修理方法を教えて下さい
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