アルトがアクセルを踏んでも走らない!といった症状のお問い合わせを受けました。
試乗してみると確かに時速20km~30km付近の時に加速しようとしてアクセルを踏み込むと車が前後に振動?(ギクシャク?)するような感覚で加速しませんでした。
今回はこのアルトの故障診断をして加速しない原因と修理費用の目安をご紹介します。
なおアクセルを踏むとキュルキュル音がする場合はアルトのベルト鳴きページも参考にして下さい。
目次
アルトのCVTの不具合はガクガクギクシャクする
CVTは内部のギヤプーリー2つを金属ベルトで繋いでエンジンの動力をミッションからタイヤに送っています。
CVTの変速はプーリーの外形を変えて調整しています。
エンジン側のプーリーを小さくしてミッション側のプーリーを大きくすればスピードは出ませんがエンジンのパワーは余ります。
逆にミッション側のプーリーを小さくすれば回転数が増えるのでスピードが出ますがエンジンのパワーは足りなくなります。
エンジンの力以上にスピードを出そうとすればミッションはスムーズに回転せずにギクシャクします。
CVTのプーリーの外形を変えるのはコンピューターです。
エンジン回転数、スピード、アクセル開度などをコンピューターが判断してプーリーの外形を変えますが、タイミングがずれるとスムーズにスピードが出ないので、馬力が落ちてきたアルトはコンピューターのプログラムを変えて変速タイミングを遅くする必要があります。
変速を遅らせる事で「エンジンの力が余る」事も「足りなくなる」事もなく走行する事が出来ます。
アルトのイグニションコイル不調は息継ぎする
先ほどアルトのCVTプログラム改善をご紹介しましたが、エンジンの力不足がイグニッションコイルやプラグの故障よる失火からきている場合もあります。
アイドリングでも失火しているような車は原因がすぐにわかりますが、エンジンが高回転する時だけ失火する故障もあります。
上記のような状態は厳密に言うとアイドリングでも微小な失火が発生していますが車を動かす力が不要なのでドライバーは気がつきません。
加速中の力が必要な時には失火の力不足が振動によって表れます。
イグニッションコイルの点検方法
コイルの故障は3種類です。
- 断線
- ショート
- リーク
断線とショートは回路のどこかで発生しますが、回路はカバーで覆われているので目視では確認できません。
回路図に従って導通テストや抵抗値を測定して判断します。
しかし、断線やショートの場合は、エンジン警告灯を点灯させて診断機で故障コードも表示されるので故障していれば簡単にわかります。
リークは故障コードが表示されませんが、失火しているシリンダーの時だけ回転数が落ちてクランクポジションセンサーの信号電圧のタイミングが基準値を外れると「異常なシリンダーがある」とだけは故障コードが表示する場合もあります。
※イグニッションコイルのリークとはプラグ以外の場所で放電してしまう事。
アルトのリーク点検(目視)
リークは目視で簡単に判断できますが、目視するにはエンジンから取り外さなければなりません。
上の画像のようにエンジンに装着されている状態ではイグニッションコイルの全体が見えません。
リークしているイグニッションコイルは高電圧によって白く焦げています。
場所によっては黒くなっている事もあります。
イグニッションコイルの表面を全て目視し、白くなっている所を探して下さい。
アルトのリーク点検(診断機)
イグニッションコイルがリークして失火すれば、どこかのセンサーの数値に変化が表れます。
代表的な変化が空燃比学習補正です。
メーカーによって単位が違うので、整備マニュアルを参考にしなければなりませんが、アルトの空燃比学習補正は%表示です。
プラスもマイナスもありますが、プラスの場合、燃料を濃くしています。
マイナスの場合は燃料を薄くしています。
空燃比学習補正値はマフラーについているO2センサーの信号によって決められます。
O2センサーで酸素が多いと判断されれば燃料を濃くするために空気の量を減らして補正値を+10%位にします。
逆に酸素が少ないと燃料を薄くするために空気の量を増やして補正値を-10%位にします。
イグニッションコイルが失火するとエンジンで酸素を燃焼しないのでO2センサーは酸素が多い信号を送って空気量を減らすために補正値を上げます。
空燃比学習補正値が20%前後は何かが故障中
普段は+-10%位ですが、イグニッションコイルが時々リークするような軽い異常の場合は加速中のギクシャクした時だけ補正値が+20%になります。
ですので、データを見る時は異常発生時のデータを見て下さい。
アルトの加速不良の原因
今回の加速不良と振動の原因はイグニッションコイルのリークでした。
下の画像で黒く焦げている所がリークしていました。
スパークプラグとの接点付近のリークが原因でパワーダウンし、通常のCVT変速比では車をスムーズに動かす事ができなくなっていました。
アイドリングが正常な時、加速中の振動はCVTが原因だと決めつけてしまう事が多いですが、診断機を繋いで、エンジンの「空燃比学習補正」とミッションの「変速比」を見ることで振動が
- エンジンの力不足で発生している?
- CVTの変速比が異常?
このどちらかが判断できます。
変速比と空燃比学習補正のデータが集まりましたらページを更新しますので数値を参考にして下さい。
アルトの加速不良の修理費用
イグニッションコイル | 7000円 |
工賃 | 3000円 |
合計 | 10000円 |