エアコンが効かない時は症状によって修理費用が大きく変わります。
例えば「冷たい風が出ない故障」の場合、
- 風は出てるが冷たくない?
- 風が出ない?
のどちらかで修理費用は変わります。
比較的安く直るのは「風が出ない」方です。
今回はエルグランドのエアコンの効かない症状で予想できる故障をご紹介します。
最後に実際にエアコンが効かないエルグランドを修理した内容も解説しますので参考にして下さい。
ヒーターとエアコンが効かない原因ページではエアコンの仕組みを解説していますので気になる症状がある方はこちらも参考にして下さい。
エアコン修理はリレーを最初に点検する
エアコンの故障を大きな分類で分けるとすれば5種類になります。
- ガス漏れと詰まり(ガス圧力系統)
- ヒューズやリレーの故障(電源系統)
- コンプレッサーの故障(ガス圧力と電源系統)
- 電動ファンの故障(ガス圧力と電源系統)
- スイッチやコンピューターの故障(電源系統)
※ガス詰まりはエキパンなどガス放出バルブも含まれます。
この中でもよく聞くのが「ガス漏れ」と「コンプレッサー」ではないでしょうか?
しかし割りと多いのがヒューズやリレーの故障です。
ヒューズとリレーの故障はメイン電源を切ってしまうのでエアコン効かない以前にエアコン自体が作動しなくなるので、最初に確認したい箇所です。
しかも安く直る個所なので最優先で点検した方がいいです。
安く直してくれる修理工場は「車の修理はどこがいい?安い店と知恵袋の人気店」も参考にして下さい。
まずは安く直る可能性があるリレーとヒューズが故障した時の特徴を説明いたします。
エルグランドのリレーとヒューズ故障の特徴
エアコンに関係するヒューズは3つです。
- コンプレッサーヒューズとリレー
- 電動ファンヒューズとリレー
- ブロワモーターヒューズとリレー
この3つですが、これらは、切れている時の特徴があるので判断しやすいです。
ぬるい風はコンプレッサー系統の故障
コンプレッサー系統のヒューズとリレーの故障の特徴
エアコンのスイッチを入れるとエアコンランプは点灯しますが冷えません。風は出ますが緩い風です。
ランプが点かない時はスイッチが故障している事が考えられます。
正常ですとエアコンスイッチを入れるとエアコンランプが点灯し、エンジン付近から「カチン」といった音がでます。
慎重に聞くと聞こえますが、聞こえない場合はコンプレッサーリレーの故障かヒューズが切れている可能性があります。
アイドリングだけ冷えないのは電動ファン系統の故障
電動ファンのリレーとヒューズの故障の特徴
正常ですとエアコンのスイッチを入れると同時に電動ファンが作動します。
電動ファンはヘッドライト付近についておりエアコンガスを冷やす仕事をしています。
ガスが冷えなくても室内に風を出すことができるので、エアコンを入れると「ぬるい風が室内に出ます。」
電動ファンを動かす回路の延長線上にアイドリング回転数を上げる回路が接続されています。
エアコンコンプレッサーはエンジン回転で回すのでスイッチを入れると負荷がかかりますが、電動ファンのヒューズが切れるとエアコンスイッチを入れた時にコンプレッサーの負荷でアイドリング回転数が下がってしまうのが特徴です。
ひどいとエンストしてしまう事もあります。
電動ファンヒューズが切れているとファンで冷やせませんが、走行風で冷やす事もできます。
ですので「アイドリング中は冷たい風は出ない」が、「走行中は冷たい風が出る」でしたら電動ファンのリレーの故障かヒューズが切れている可能性が高いです。
風が出ないのはブロワーモーター系統の故障
ブロワモーターのヒューズとリレーの故障の特徴
ブロワーモーターは室内に風を出すファンです。
このヒューズとリレーが故障するとエアコンを入れても冷たい風どころか「ぬるい風」もでません。
風量を最大にする時だけ風が出るような故障がありますが、このような場合はリレーやヒューズは正常です。
ブロワモーターも正常です。
レジスターといった抵抗が断線しモーターに電流を流せなくなってこのような症状が出ています。
レジスターはブロワモーターの近くについており、内部の抵抗はブロワモーターの風で冷やしています。
ブロワモーターが動かないとレジスターを冷やす事ができないので故障しやすくなります。
ヒューズ、リレーの故障と本体故障は似ている
リレーはこのようにヒューズボックス内にあります。下はリレーを取り外したものです。
コイルに電流を流すと電磁力で接点が繋がる仕組みになっています。以下の回路を参考にして下さい。
今までご紹介した症状の時はリレーやヒューズの故障ではなく、その本体が故障している事もあります。
ヒューズやリレーを点検して問題がなければ本体の電源とアースを点検すれば故障しているかどうか判断できます。
実際にエアコンのスイッチを入れた時に本体で測定した電圧が12V以上なら正常です。
アース制御の部品もあるのでスイッチを入れた時にアースされているのも確認します。
エアコンガス点検で効かない原因がわかる
ヒューズやリレーの点検の次に重要なのがエアコンガスです。
エアコンガスの圧力を見ると以下の異常がわかります。
- ガス漏れ
- コンデンサーの詰まり
- 水分の混入
- コンプレッサーの故障
- エキパンの開きすぎ
- サーモアクチュエーターの故障
それぞれ解説いたします。
ガス漏れ時のガス圧力
ガス漏れをしていると低圧と高圧の両方とも圧力0Paに近いです。
コンプレッサーも動かないのでエアコンのスイッチを入れてもエンジン回転数は上がりません。
コンデンサー詰まりのガス圧力
エルグランドの高圧ガス測定箇所はコンデンサーとエキパンの間です。
上の画像の赤いホースが高圧ガスバルブに繋がり、黄色いホースが低圧ガスバルブに繋がります。
下のイラストを見ると「どの部品の間のガス圧力を測っているか?」わかると思いますので、どの部品が詰まると圧力がどうなるか予想ができます。
エアコンガスの流れは
- コンプレッサー
- コンデンサー
- エキパン
- エバポレーター
- コンプレッサー
なのでコンデンサーが詰まるとガスが送れないので、コンデンサーとエキパンの間(高圧側)は圧力が低くなります。
逆にエキパンやエバポレーターが詰まると圧力が高くなります。
以下イラストはガス流れのイメージです。詰まるとどこの圧力が上がるか想像してみて下さい。
そもそもコンデンサーが詰まる原因はコンプレッサーの摩耗粉です。
エキパンの詰まりはエキパン本体の可動部分の固着です。
上図がエキパンです。下の大きなな穴に見えるシャフトが上に押されて上の穴にある弁を開きます。
弁を開くとエアコンガス(液状)が噴射され気化されて冷やしますが、このシャフトが動かなくなれば詰まります。
このようにエアコンの故障は詰まる箇所によって他も修理しなくてはならないケースもあるので注意して下さい。
水,空気,異物が混入した時のガス圧力
配管内の水分が多いと低圧と高圧のゲージ針が小刻みに振動して安定しません。
エアコンガスに空気や水分、異物が混ざると冷えが悪くなります。
異物とは主にコンプレッサーの摩耗で発生する粉です。
エアコンをよく使う車は摩耗しやすいです。
真空引き作業を1時間ほどすれば空気、水分が抜けます。異物も少し除去されます。
コンプレッサー故障のガス圧力
コンプレッサーが故障していると、エアコンのスイッチを入れると低圧と高圧が同じ数値になります。
これはコンプレッサー内のポンプとなっている空間が異物によって密閉できなくなり、低圧と高圧の空間が繋がってしまっている状態です。
そうなると吸い込み力も排出力も弱く、エアコンガスが弱く流れているだけなので、液体~気体の変化がなく気化熱が発生させられず、冷えません。
ガス圧力でも判断できますがコンプレッサーの故障は異音もします。
エアコンのスイッチを入れるとガラガラ音がする場合はコンプレッサーの故障の可能性が高いです。
エキパン開き過ぎのガス圧力
エキパンはガス通路を狭くし、ガスを強く噴射させます。
エキパンが開き過ぎてしまうと圧力を保持できないので液体になりません。
圧力が保持できないと高圧と低圧の差はありません。
ゲージでは同じ数値を示します。
ガスは液体~気体になる時に冷えるので、エキパンが開き過ぎはエアコンが効きません。
エアミックスドアアクチュエーター故障のガス圧力
エアコンガス圧力は正常なのにエアコンが効かないのはアクチュエーターが故障しています。
正常圧力- 低圧 2.0MPa
- 高圧 1.5MPa
この付近の圧力でしたらコンプレッサー正常、ガス漏れナシ、詰まりナシ、と思って大丈夫です。
そうなるとエアコンが効かない原因は暖かいヒーターの設定になっている事が考えられます。
暖房と冷房の切り替えは車内のヒーターユニットで行っています。
ヒーターユニットはエンジンの熱いクーラントの部屋と冷たいエアコンガスの部屋があり、切り替え扉でしっかりと区切られています。
どちらかの部屋を開放する事で暖房と冷房を使い分けをしていますが、ガス圧力が正常でしたらエアコンガスの部屋は必ず冷えているので暖房と冷房の部屋が正常に切り替えができていない事になります。
切り替えをしているのはエアミックスアクチュエーターです。
ステレオ裏側の下についています。
簡易点検では温度設定を変えたときに作動音がするか確認します。
エルグランドはコンプレッサー故障が定番
これまでご紹介した故障の特徴と今回エアコンが効かないエルグランドを比較すると「エアコンガス圧力が低圧と高圧が同じ」といった症状が一致しました。
この症状はコンプレッサー故障の特徴です。
スイッチを入れるとマグネットクラッチは繋がりコンプレッサーは動いているのにガスの圧力が上がらない状態になっています。
コンプレッサーの点検は分解して中を見るのが間違いありませんが、コンプレッサーオイルを見ても状態を判断できます。
オイルを見るために、コンプレッサー外し、低圧パイプと高圧パイプを外してコンプレッサーを傾けてパイプ取付部分からオイルを出します。
オイルを見て異物が見えましたらコンプレッサー内が削れた証拠です。
下の画像は実際にコンプレッサーから出したオイルです。
見えにくいですが、コンプレッサーの削れた粉が入っていました。
削れていれば圧縮不足になるのでコンプレッサーが故障している可能性は十分あります。
ガス圧も異常なのでコンプレッサーの故障と判断できます。
コンプレッサーの修理費用
コンプレッサー | 45,000円 |
ACガス | 1,000円/4本 |
交換工賃 | 15,000円 |
合計 | 64,000円 |
上記コンプレッサーはリビルト品です。
リビルト品は中古部品を分解して修理したものですが、弱い箇所を強化してあるので安心です。
価格も新品より30%以上安くなるのでお勧めです。
今回はコンプレッサーの削れ粉も出ていましたので、サイクル内をエアー圧で清掃します。
粉が大量に出てくる時はコンデンサーの交換もしないとエアコンの冷えが弱かったり、修理後、再度コンプレッサーが故障することがあるので注意してください。