はじめに
O2センサーが故障するとエンジン警告灯が点灯します。
しかし、O2センサーは故障してもエンジン不調になりません。
警告灯も消えてしまう場合もあるので、本当にO2センサーが故障しているかも判断できません。
他のスパークプラグなどの故障でも診断機を見ると「O2センサー異常」となるケースが多々あります。
ここでは整備マニュアルと実際の修理データを元にO2センサーの役割、仕組みと点検方法を解説しますので、O2センサー系の異常に関連する故障箇所のヒントにして下さい。
目次
O2センサーの役割
O2センサーは「オーツーセンサ」や「オキシジェンセンサ」と呼ばれており、排気ガスの酸素濃度を検知しています。
付いている場所はマフラーの触媒前後です。以下の画像の赤丸がO2センサーです。
左がエンジン側、右が車体後方のマフラーの出口です。左のO2センサーはA/Fセンサーの車もあります。
A/Fセンサーは空燃比センサーと呼ばれています。作動はO2センサーに似ていますが、簡単に説明するとO2センサーを更に精密にした部品だと思ってもらえれば大丈夫です。
※ A/Fセンサーの解説ページも参考にしてください。
エンジンが正常に作動してCO 、HC 、NOXの有害排出ガスを抑えるには空気とガソリンの量を理論空燃比にする必要があります。
理論空燃比は 「空気14.7:ガソリン1」です。
燃料を薄くすれば酸素が増えるのでCOとHCは酸化しやすくなりCO2とH2Oになりますが、逆にNOXを浄化するためにはCOとHCを使って還元させる必要があるのでCOとHCの酸化反応が多いとNOXが減りません。
薄くても濃くてもCO,HC,NOXいずれかの浄化性能は落ちますので、燃料と空気量のバランスが大事です。
それが理論空燃比ですが、理論空燃比に近づける為にO2センサーが触媒前後に備わっています。
O2センサーはマフラー内の酸素濃度を検出してエンジンコンピューターに信号を送ります。
コンピュータは送られてきた酸素濃度信号を元にガソリンと空気量を計算して燃料噴射量を変化させます。
理論空燃比に近づくと触媒の化学反応効果が活発になり、有害排出ガスが減らします。
排気ガスが臭い時は車検に通る排気ガス対策のページを参考にして下さい。
O2センサーの仕組み
取付位置 | 触媒の前及び後ろ。両方に付くタイプもある。 |
正常な作動 | キーONでメーター内にエンジン警告灯が点灯する、エンジン始動後消灯。 |
異常時 | 異常時は黄色のエンジン警告灯が点灯。メーカーにもよるが触媒温度が上昇していると点滅に変わり、高温防止のため燃料カットするケースもある。 |
作動 | 排気ガス中の酸素を検出すると起電力が発生する。発生した起電力を元にエンジンコンピューターが計算して燃料を濃くしたり薄くしたりする。下図参照。 |
O2センサーは内側がジルコニア素子で外側が白金です。
内側が大気、外側が排気ガスと接触し、酸素濃度の差で起電力を発生します。
仕組み
O2センサー表面の白金の化学反応で排気ガス中のCOとHCは酸化し、O2を奪います。そうなりますとジルコニア素子付近の酸素がなくなり、内側の大気と酸素濃度差が発生し電子を移動させ起電力を発生させます。
大気は酸素が豊富です。排気ガス中に酸素が少ないと大気と差が大きくなるので、起電力も大きくなります。
ジルコニア素子が排気ガス管内に酸素を検知すると最大で約1.0V未満の微弱な起電力を発生させます。
ジルコニア素子は360℃以上にならないと起電力を発生させないので、冷間時はヒーターを使って300℃までO2センサーを熱くするタイプが主流です。
エンジンが暖まると触媒前後の温度は自然と400℃~700℃位になるのでヒーターを使わなくても作動します。
理論空燃比より燃料が濃い(リッチ)と約1.0V、薄い(リーン)と約0Vの電圧を出力します。
下のグラフは空燃比と電圧のグラフです。理論空燃比を境に急激に上下しているのがわかると思いますが、O2センサーはリッチなのかリーンなのかしか判断できません。
より細かく空燃比を調整するには触媒の前にA/Fセンサ(空燃比センサ)を使いますが、車によって使用している車と使用していない車があります。
警告灯が付く時の点検
O2センサー系の故障コードは
- O2センサー異常
- O2センサー(Low,high)異常
- O2センサーヒーター異常
- リーン、リッチ異常
などがありますが、O2センサー以外が故障してこれらのコードを検出している事も多いので他の箇所も合わせて点検する必要があります。
O2センサーのヒーター異常のコードを表示した時
O2センサーのヒーター本体の故障かヒーター回路の断線またはショートしている時にコードを検出します。
具体的にはヒーター回路に12Vの電圧をかけている時(冷間時)にコンピューター側のヒーター信号回路の電圧が12Vでない時です。
コンピューター側が12Vならコンピューターの故障しか、ありません。
まずは故障発生率が高いO2センサー本体の点検をします。
- 車両側のヒーター端子に12Vきているか?
- O2センサーヒーター端子の抵抗は正常化か?
まずはこの2つを点検して、異常がなければコンピューターまでの配線を点検します。
下のようにヒーター回路の電圧を測ります。問題がなければ次はO2センサーヒーターの抵抗を測ります。
下の画像はヒーターの抵抗を測ったものです。その時の温度で抵抗は変化しますが、ヒーター回路の故障は主に断線です。
導通があれば正常と思ってもらえば大丈夫です。
おそらく、O2センサーヒーター異常の場合は、断線している事が多いので本体の導通がない場合がほとんどです。
もし導通があるようでしたらコンピューター側でヒーター配線の電圧を測定し、12Vが発生していなければ「配線の修理」、「12Vならコンピューターの交換」といった修理になります。
O2センサー正常時の電圧波形
下の画像はO2センサーのアイドリング時の波形です。
2個使っているタイプの車ですが、上が触媒前に装着されているO2センサー、下が触媒後ろに装着されているO2センサーを表示しています。
左から右に向かって時間が経過していますが、左端から右端まで約5秒間です。上のO2センサーは1秒間の間に0.7V~0.2V付近を1往復しています。
触媒前のO2センサーはこのリッチとリーンを常に繰り返す波形が正常です。回転数を上げるとリーンになりコンピューターに燃料追加指示を送ります。
下の触媒後ろの波形は約0.9Vでリッチを表示しています。一瞬下降していますが、ほぼ一定です。
後ろのO2センサーはこの波形でしたら正常です。後ろのO2センサーが前のO2センサーのように波形が上下を繰り返すと触媒が機能していない事になり、触媒劣化となります。
エンジン不調がひどい時はO2センサの故障ではない
O2センサーは燃料の量を制御していますが、アイドリング回転数や吸入空気量は制御していません。
O2センサーの異常で理論空燃比にならなくてもアイドリングを調整するISCバルブや点火時期をコントロールして安定したエンジン作動が可能です。
しかし、燃料が必要以上に薄ければアクセルを踏みスロットルバルブが開き空気を流入させた時に、更に燃料が薄まるので一瞬爆発せずにエンストしそうになる場合もあります。
また、燃料が必要以上に濃ければアクセルを踏んで空気を送り込むとプラグの燃焼が一気に進み息継ぎをするような症状になります。
その程度の軽い症状がO2センサの異常です。
明らかにエンジンがガタガタ振動するなどの症状でO2センサー系の故障コードを表示していれば、「他が故障しているのでO2センサーの出力電圧が異常になっている」と考えられます。
リーン異常、リッチ異常の故障箇所
リーン異常を故障コードで検出する時は「燃料補正量が一定時間閾値を超えた時」です。
燃料補正量はO2センサーがコンピューターに「今は燃料が薄い」といった信号を送り続けると燃料補正量を増やして燃料を濃くします。
具体的には5秒~10秒ほど燃料補正値の閾値を越えるとリーン異常コードを検出する車が多いです。
O2センサーの信号電圧が0.21V以上0.69V以下の時はリーン状態なので、燃料補正値は多くて(+側)正常ですが、補正してもリーンが続くのは燃料は本当に薄い事が考えられます。
※先ほどの電圧波形と補正値を上下に表示させて比べるとわかりやすいと思います。
逆に0.62V以上が続くとリッチ状態なのでマイナス補正して燃料を薄くします。
O2センサーが燃料が薄い(リーン)と判断する理由
- 空気量が多い
- 燃料噴射量が少ない
1.空気量が多ければガソリンを燃焼させても酸素が余るので薄いと判断します。
2.燃焼噴射量が少ないとガソリンを燃焼させる空気が少なく済むので酸素が余り薄いと判断します。
以上の事から空気量が多いのは「エアーの吸い込み」「ISCバルブの開きすぎ」「エアフロセンサーの特性異常」「A/Fセンサーの異常」「インジェクターの詰まり」などが考えられます。
O2センサーが燃料が濃い(リッチ)と判断する理由
- 空気量が少ない
- 燃料噴射量が多い
リーンと逆ですが、リッチは排気ガス中の酸素濃度が極端に少ない事を示しています。
エアフローセンサーの特性ズレ、吸入空気系統の詰まり(ISCVやエアークリーナー)、A/Fセンサの異常、パージバルブの故障、インジェクタの垂れ、などが考えられます。
O2センサーの異常
リッチ、リーンを判定しているO2センサー本体の故障の可能性も考えなければなりませんので、O2センサー系の警告灯は少し複雑な故障探求になります。
よくある故障が、O2センサー特性のズレです。
例えば、O2センサーは常に排気ガスに触れているのでカーボンが付着しやすい状態です。
センサー部分に付着して酸素を取り込む通気口を塞ぐと酸素が検出しないので、リッチ異常になります。
下の画像は右が詰まってリッチ異常が出ていたO2センサー。
この状態では酸素は検出できません。
その他にジルコニア素子や白金コートが割れて反応しなくなったり、など本体故障もあります。
O2センサー系の故障は他の数値が大事
車にはエンジンのセンサーとアクチュエーターの作動状態をモニターできる機能があります。
診断機をつないでECUデータを読み込むと現状の様々な数値がみれるので正常値と比較することで異常を探すことができます。
O2センサー系の異常コードが出ている時は以下3つの数値も見て下さい。
① 吸入空気管圧力の基準値と比較する
インテークマニホールド圧ともいいます。大気圧に近ければエアーの吸い込み、EGRの開き、ISCVの開きが考えられますのでリーン異常のはずです。この状態でリッチ異常ですとO2センサーの特性異常の可能性が高いです。
② エアフローセンサー数値の基準値と比較する
吸入空気量ともいいますが、基準より多ければ燃料補正量が増えます。少なければ燃料補正量が減ります。
燃料補正量は簡単にいうと燃料の濃さです。プラスですと「濃く調整してる」マイナスですと「薄く調整してる」です。
アイドリングから回転数を2500rpmまで上昇させて燃料補正量の変化を見て下さい。
燃料補正量= F/B補正値 + F/B学習値
上のグラフはアイドリングで補正量が多すぎです。補正量はアイドリングで±20%以内が正常です。
アイドリングで多くて回転を上げると基準まで下がるのはエアーの吸い込みが考えられます。
回転を上げるにはスロットルバルブを開きスロットルからエアーを吸い込むので他のエアー吸い込みがなくなり、このグラフになります。
上のグラフは燃料が詰まっているため、リーンになり燃料補正が多くなっています。回転を上げてもあまり変わらず補正量が高いのがインジェクタの詰まりの特徴です。
上のグラフはエアフロセンサーの特性異常で回転を上げた時に20%も上昇しています。通常ですと変化は+-10%位に収まります。
③ 他の故障コードの検出を確認する
点火系が故障していてもO2センサーの信号電圧は変わります。
O2センサーが故障しているために、他の故障コードが検出される、といったことはあまりありません。
他の故障コードから調べるのも大事です。
よくある質問
Q: O2センサーが壊れたまま乗るとどうなる? |
空燃比が調整できないので、有害排出ガスのCO,HC,NOXが増えます。エンジン出力も低下するので、燃費が悪化し、走りも遅く感じます。触媒に未燃料が流れるので触媒温度が上昇し、触媒劣化が進みます。 |
Q: O2センサーが壊れると、どんな症状がでる? |
エンジン警告灯が点灯し、少しだけエンジンパワー不足を感じますが、多くの方は、何も変化を感じずに乗ることが出来ます。 |
Q: O2センサーが壊れる原因は? |
排出ガス濃度に関連する部品が劣化したまま車に乗り続けるとO2センサーに負担がかかります。スパークプラグの劣化は排気ガス温度を上昇させるので負担になります。またエンジンが暖まりにくい近距離走行ばかりすると水分付着とカーボン付着で故障しやすくなります。 |
色々な修理方法を教えて下さい
修理手順の解説が理解しやすいかどうか、不明瞭な部分や改善できる点、または追加すべき情報など、具体的なフィードバックを提供してください。質問でもかまいません。より正確に早く修理ができるよう、協力していただけると幸いです。