走行性能ランキング外の車も100台以上比較|CVT寿命は駆動力曲線で予測

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走行性能ランキング比較シミュレーター

1. エンジン性能
最大出力 kW
at rpm
最大トルク Nm
at rpm
2. 変速比 (L/H/F)
low
high
final
3. タイヤ・車両重量
サイズ
重量kg
半径: 0.000m
抵抗線:

※スマホの画面ですと横幅が狭いので、パソコンやタブレットでご利用することを推奨いたします。

 

スペック表を元に計算したグラフは赤線、黄色線、緑線—、で表示されます。走行性能ランキングに登場しない車の走行性能も専門家が解説に利用するような形でグラフ表示されます。

青色ボタンの「+比較用データ行追加」に実測値を入力するとピンク丸、黄色四角、紫四角、緑三角、で表示され、データーを増やすと点線------でつながります。

紫四角、は変速比の実測値を入力すると表示されます。ここにCVTの異変が現れます。

 

グラフの線上でマウスをゆっくり動かすと「変速比」「回転数」「駆動力、加速度」がツールチップ表示されます。

特に「加速度」のツールチップはその速度からどれほど快適にスピードアップするか可視化できるので走り重視の方はとても参考になります。

 

試しに赤線の速度85kmの上にマウスポイントをおいて下さい。

加速度gが表示されます。別の車と比べてどうでしたか?数値が高ければ、時速85kmからでもぐんぐんスピードが上がる事をグラフが教えてくれます。

 

重量も変更できるので、乗車人数(重量)によって変化する加速度gも比較することができます。

ここでは走行性能ランキングに掲載されない車も比較できるのが特徴です。

このようにメーカーのデータで性能を比較できますが、ここでは実際に走行した数値を入れる事で現状とも比較できます。

 

整備士の方はスキャンツールの実測変速比を入力してグラフの基本変速比と比較することで、CVTベルトのスベリ、ロックアップシステムの異常、ソレノイドバルブやセンサーの異変に気がつきます。

スキャンツールやメーターで実測値(車速と回転数)をプロットする際、単に「点を打つ」だけではなく、内部では以下の計算をリアルタイムで行っています。

 

 

駆動力曲線図の内部で行っている計算の仕組み

あなたが青色ボタンに入力した「車速」と「回転数」に対し、プログラムは以下のステップを踏んでいます。

  1. 実速ギヤ比(変速比)の逆算

    入力された「車速」と「回転数」、そして諸元欄の「最終減速比」「タイヤ径」を使って、その瞬間にCVTが「実際に何速相当(変速比いくら)で走っているか」をまず割り出します。

    $$g = \frac{2 \pi \times r \times \text{rpm} \times 60}{v \times \text{finalG} \times 1000}$$
    ※gギヤ比
  2. その回転数でのエンジントルク推定

    諸元欄に入力した「最高出力」や「最大トルク」の数値からエンジンの性能曲線を推定し、「その回転数(rpm)の時にエンジンが何Nm出しているか」を計算します。

  3. 駆動力(N)の算出

    上記1と2で出た数値に、さらに「トルコン増幅」と「伝達効率(0.88)」を掛け合わせて、最終的な**路面を蹴る力(N)**を導き出しています。

 

このシミュレーターの「通常走行40%」では、街乗りやバイパス合流など、一般的なドライバーが「ごく普通に、あるいは少し元気に加速している状態」を想定して数値を計算しています。

具体的には以下の数値をベースにロジックを組んでいます。

 

通常走行40%の想定(ロジック)

  • 想定アクセル:約20% ~ 40% (部分負荷域)

  • ベタ踏み(100%)ではなく、信号待ちから流れに乗るまでの加速や、巡航時の負荷を想定しています。

  • そのため、トルコンの増幅率(TC)も全開時の「2.0倍」ではなく、滑らかな発進を想定した「1.3倍」程度に抑えて計算しています。

 

通常走行のエンジン回転数の想定

計算式(targetRpm)では、車速に応じて以下のように回転数が変化するように設定しています。

車速 (km/h)想定回転数 (rpm)運転シーンのイメージ
0 ~ 20km/h1,800 ~ 2,000rpm穏やかな発進(エンジン音が少し聞こえ始める)
60km/h2,500rpm 前後バイパスなどの合流・緩加速(CVTが少し回転を上げる)
100km/h ~3,000rpm 強高速道路での巡航・追い越し準備

 

このシミュレーターは、整備士の方や一般の方ががスキャンツールやメーターで得た「車速」と「エンジン回転数」という限られたデータから、その瞬間にタイヤが地面を蹴っている力(駆動力)を逆算して可視化する仕組みです。

 

メーターに車速と回転数が表示されるお車でしたら、時速 5km10km 20km 30km 40kmといった具合でその瞬間の回転数をメモ書きしておけばスキャンツールなしでもグラフが作成できます。

 

計算は大きく分けて 4つのステップ で行っています。

 

エンジントルクの推定 Te

カタログ値(最大トルクと発生回転数)を基に、現在の回転数 (rpm) でどれくらいのトルクが出ているかを計算します。

  • 低回転域: アイドリングから最大トルク発生点まで、放物線を描いて盛り上がるように補完します。

  • 高回転域: 最大トルク発生点から最高出力発生点にかけて、トルクが緩やかに垂れていく特性を再現しています。

$$T_e = \text{推定トルク (Nm)}$$

 

エンジン性能曲線図を想定して、その回転数のトルクを出しています。

 

 

トルクコンバータの増幅 TC

発進時(低速域)の力強さを再現するため、トルコンの特性を加味しています。

  • 計算式: 速度 v < 20km/h の間は、トルクを最大 1.3倍(常用域設定)に増幅します。

  • 速度が上がるにつれて増幅率を下げ、直結状態(1.0倍)へ滑らかに移行させます。

 

 

ギヤ比による増幅 G_total

エンジントルクを「トランスミッション」と「デフ(最終減速比)」で何倍に大きくするかを計算します。

  • トランスミッション比 i_g: 入力された LowHigh の範囲内で、車速と回転数から逆算します。

  • 最終減速比 i_f: デフのギヤ比を掛け合わせます。

  • 伝達効率 eta: 内部摩擦などを考慮し、約 0.88(12%ロス)として計算に含めています。

$$\text{総減速比 } G_{total} = i_g \times i_f \times 0.88$$

 

 

駆動力への変換 F

最後に、増幅されたトルクをタイヤの半径 (r) で割り、地面を叩く「力(ニュートン)」に変換します。これがグラフの縦軸になります。

参照:駆動力計算式

 

【計算の総仕上げ】

$$\text{駆動力 } F (N) = \frac{T_e \times TC \times G_{total}}{r}$$

 

 

理論駆動力(赤い線)はどうやって出している?

通常走行(40%)の理論値の計算では、「普通の人が加速する時の回転数遷移」を仮定しています。

  • 時速 0 から 120km/hにかけて、エンジン回転数が 1,800rpm から 3,300rpm へ緩やかに上がっていくと仮定し、その各地点での「駆動力 F」を連続して計算することで、滑らかな曲線(赤い線)を作っています。

 

計算式まとめ
$$F (N) = \frac{T_e \times TC \times (i_g \times i_f \times \eta)}{r}$$
  • T_e (エンジントルク): 回転数から推定した、エンジン単体の力。

  • TC (トルコン増幅率): 発進時の流体によるトルク増幅(常用域では最大1.3倍)。

  • i_g (変速比): CVTやATの現在のギヤ比。

  • i_f (最終減速比): デフギヤの比率。

  • eta (伝達効率): ギヤの摩擦ロスなどを差し引く係数(0.88)。

  • r (タイヤ有効半径): トルクを「地面を蹴る力」に変換するためのレバーの長さ。

 

 

走行抵抗線の見方

0%,3%,10%を選択すると表示される右上がりのグレーの点線です。

「登坂性能」や「積載時の限界」を分析するなら、走行抵抗線は必要です。

 

駆動力と走行抵抗線が交わる点こそが「その車の最高速」であり、その差が「加速に使える力」だからです。

 

走行抵抗線が必要な理由

  • 最高速の予測: 駆動力(赤線)と走行抵抗線が交差する速度が、その車の理論上の最高速です。
  • 登坂能力の可視化: 10%勾配の抵抗線を引くと、エブリイ(NA)が荷物を積んだ時に「どの回転数まで上げないと登れないか」が視覚的に分かります。
  • 空気抵抗の影響: 速度の2乗で増える抵抗線を描くことで、ジムニーのような空気抵抗の大きい車が高速域でなぜ加速しないのかが数字で裏付けられます。
勾配(%)道路のイメージ車の挙動・シミュレーターの見方
0% (平坦)一般的な市街地の平地駆動力(赤線)と抵抗線の隙間が最大になります。この「隙間の広さ」が加速の鋭さです。
3% (緩い坂)高速道路の長い上り坂空荷なら気づきにくいですが、軽トラに荷物を満載していると、アクセルを少し深く踏み足す必要があるレベルです。
5% (普通の坂)跨線橋(線路を越える橋)多くの車が「あ、上り坂だな」とはっきり感じる勾配。シミュレーター上では抵抗線がグッと上がり、最高速が目に見えて落ちるポイントです。
10% (急坂)立体駐車場のスロープかなりの急勾配です。NAのエブリイ等では、1速や2速でないと力強く加速できない領域。抵抗線が赤線にかなり接近します。
20% (激坂)スキー場の連絡路・酷道軽自動車の登坂限界に近いレベル。1速の駆動力(赤線の左端)がこの抵抗線より下にあると、**「発進すらできない」**ことになります。

 

「走行抵抗」の計算式

走行抵抗は、以下の3つの要素を足し合わせて描画しています。

走行抵抗 (R) = 転がり抵抗 + 空気抵抗 + 勾配抵抗

  1. 転がり抵抗: μ ・m・g(タイヤと路面の摩擦。速度に関わらずほぼ一定)$$ Fr= μ_r\cdot mg $$

  2. 空気抵抗: 0.5 Ρ Cd  A  v^2(速度の2乗で急増する)$$ Ra=\frac{1}{2} ρC_dAv^2$$

  3. 勾配抵抗: $m \cdot g \cdot \sin(\theta)$(坂道の角度。重量に比例して激増する)$$r= m\cdot g\cdot sinΘ $$

 

 

 

ハイブリッドの注意点「システム最高出力・最大トルク」を入力する

整備士の視点で、ハイブリッド車をこのグラフで見る際のポイントを3つにまとめました。

ハイブリッド車には「エンジン」と「モーター」の2つの動力源がありますが、カタログに載っているそれぞれの数値を単純に足し算したものは使えません。

 

ハイブリッド車を選択すると自動で出力やトルクが入力されますが、これらはエンジン単体のデータです。

 

ハイブリッドの駆動力を出す方法
  • 入力値: カタログの主要諸元表にある「システム最高出力(kW)」を探して入力してください。

  • トルクの考え方: モーターは「0回転から最大トルク」が出るため、低速域の数値が非常に高くなります。例えば、ノート e-POWERなどは、エンジン車でいう3.0Lクラスの出足をシミュレートするために、トルク値を少し高め(現在表示の1.5倍〜2倍程度)に設定してみると実車に近い動きになります。

 

 

ハイブリッドの「変速比」の扱い(THS-IIなど)

トヨタのプリウスやアクア(THS-II)は、物理的な「ギヤ変速」をせず、電気的に連続可変させています。

  • 入力のコツ: * **FinalG(最終減速比)**は諸元表の数値をそのまま入れます。

    • LowG / HighG については、電気的な変速範囲の最大・最小を入力することで、計算上の「駆動力の幅」として再現できます。

 

 

グラフで見えるハイブリッドの「凄さ」

この9,000N固定グラフでハイブリッド車を表示すると、エンジン車との決定的な違いが見えてきます。

特徴エンジン車(ガソリン)ハイブリッド / e-POWER
低速域(0-30km/h)回転が上がるまで駆動力が低いいきなり高い駆動力(N)が出る
グラフの形右肩上がりに盛り上がる左端(低速)からいきなり高い位置にいる
常用域の余裕ギアを下げないと力がでない常に9,000Nに近いラインを維持できる

 

 

MTもCVTに例えて計算

MT車の場合、本来は「1速、2速、3速…」と階段状にグラフが分かれますが、現在のシミュレーターでは「CVTのように滑らかに変速したと仮定した理想曲線」として描画されています。

シミュレーターの内部(drawCarChart 関数)では、車速に合わせて以下の計算を自動で行っています。

  • 計算の仕組み: その速度で、エンジン回転数が「高すぎず低すぎない範囲(ターゲット回転数)」に収まるようなギヤ比を逆算しています。

  • 制限: 逆算したギヤ比が、入力した low (5.809)high (1.000) の範囲内に収まるように制限をかけています。※例はジムニー

つまり、ジムニーのグラフは**「1速(5.809)から5速(1.000)までの間を、クラッチを切らずに無段階で変速し続けた場合の最強の駆動力」**を描いていることになります。

 

 

MT車のグラフをどう読み解くか

整備士・研究者の視点で見ると、この「滑らかな線」は以下の2つの意味を持ちます。

  • 「ポテンシャルの限界」: 各ギヤで引っ張った時の「頂点」を繋いだ線になります。これより上の駆動力は、そのエンジンとギヤ比では絶対に出せません。

  • 「実測値(点)との比較」: 実際にジムニーを走らせて「3速 3000rpm」などのデータを入力すると、その点は理論曲線(赤線)より少し下、あるいは線に重なる位置に現れます。

 

 

 

整備士はこれでCVTの寿命を判断

この仕組みがあるおかげで、以下のような「現車の健康診断」が可能になります。

※注意:比較はアクセル40%か100%をスキャンツールで確認して下さい。

  • 「理論の赤線」と「実測のピンク点」が重なる場合:

    その車は、カタログスペック通りのパワーが出ており、CVTの変速制御もメーカーの意図通り(ロジック通り)に動いている「健康体」だと言えます。

  • 「ピンク点」が「赤線」より大きく下にズレる場合:

    「車速と回転数の関係(ギヤ比)」は物理的に決まるため、もし点が下に来るなら、それは「エンジンそのもののトルクが、カタログ値より落ちている(失火、燃料不足、圧縮低下など)」という可能性を示唆します。

つまり、諸元欄の数値を書き換えると、それに応じて「実測値のプロット位置(N)」も一緒に上下に動くようになっています。

まさに、スキャンツールの生データに「物理法則のフィルター」を通して、車のコンディションを可視化している状態です。

 

 

普通走行でCVTの変速が正常か診断

フルスロットルでなくても、「車速に対して、今の回転数は適切か?」という点は比較できます。

  • 正常な車: アクセル開度に応じて、設定してある「ハイゼット」や「N-BOX用」の理論線に沿って、ピンク点(実測値)がきれいに並びます。

  • 異常(滑りや制御不良): 回転数だけが異常に高い位置にプロットされたりすれば、「CVTの油圧制御」や「ベルトの滑り」の予兆を疑う材料になります。

 

 

「トルクの出方」の違和感に気づける

普通走行でも、エンジンの「計算上の駆動力」は算出されます。

「この回転数でこの車速なら、理論上はこれくらいの駆動力(N)が出ているはず」

という基準がグラフにあることで、「なんか今日、いつもの同じ坂道でアクセルを余計に踏まないと登らないな」という感覚的な違和感を、数値(Nの不足)として可視化できるのがこのツールの強みです。

「同じ重量・同じ時速100km」という条件下では、「駆動力が低い車の方が、圧倒的に効率が良く、機械としての完成度が高い」と言えます。

 

  • 燃費: 駆動力が低い方が圧倒的に良い。

  • 静粛性: 負荷が低いため、駆動力が低い方が静か。

  • 再加速: 抵抗が少ない600Nの方が、伸びが良い。

 

 

 

トルコンのスリップ診断の見方

発進時の「25km/h以下」でデータを取れば、フルスロットルでなくてもトルコンの増幅(スリップ)が適切かが見えます。

この速度域がトルコンが最も「仕事」をしており、かつ「流体によるトルク増幅」と「スリップ(滑り)」のバランスが顕著に現れる領域だからです。

 

エンジンのスペック表(点)だけでは見えない、実走行の「線の粘り」を読み解くための仕組みを解説します。

 

1. トルコンの基本構造:なぜトルクが増えるのか?

トルコンは、内部のオイル(フルード)を介して動力を伝達する「流体継手」の一種です。主に3つのパーツで構成されています。

  1. インペラー/ポンプ: エンジンと一緒に回転し、オイルをかき回す。

  2. タービン: オイルの勢いを受けて回転し、トランスミッションへ力を送る。

  3. ステーター: ここが肝です。 タービンから戻ってきたオイルの流れを変えて、再びポンプを回す力として再利用します。

トルク増幅の原理 扇風機(ポンプ)の風で別の扇風機(タービン)を回すとき、戻ってくる風の向きを整流板(ステーター)で変えて、後ろからプロペラを押し戻してあげると、エンジンの力以上の回転力が発生します。これが「トルク増幅」です。

【発進時(0〜10km/h)】― トルク増幅モード(最強)

  • 「エンジン入力:100」
  • 「ステーターの跳ね返り:+100」
  • 「ミッションへの出力:200(2倍!)」

【加速中(15〜25km/h)】― 増幅効果減少モード

  • 「エンジン入力:100」
  • 「ステーターの跳ね返り:+30」
  • 「ミッションへの出力:130」

【巡航時(30km/h〜)】― ロックアップ(直結)モード

  • 「エンジン入力:100」
  • 「ロックアップ(直結)」
  • 「ミッションへの出力:100」

ポンプとタービンの回転差がなくなると増幅しないのでスピードが出たらロックアップする方が効率がよくなります。

 

2. なぜ「25km/h以下」が重要なのか

① トルク比(増幅率)の最大化

発進直後、エンジン回転数に対して車輪(タービン)の回転が遅いとき、ステーターによる整流効果が最大になります。一般的に、停止状態からの発進時にはエンジンのトルクを約1.5倍〜2.5倍に増幅させます。

  • シミュレーターの視点: 25km/h以下はこの「増幅マジック」が効いている区間です。ここでデータが跳ね上がっていれば、トルコンが力強く車体を押し出している証拠です。

② ストール回転数とスリップの確認

アクセル全開でなくても、トルコンは常に「滑り」ながら力を伝えています。

  • 適切なスリップ: エンジンが最もトルクを出せる回転数まで、意図的に「滑らせて」回転を上げます。

  • 25km/h以下の挙動: この速度域でエンジン回転数がスッと上がり、速度が後からついてくるようなデータが取れれば、トルコンが「エンジンの一番美味しい回転域」を使おうとしている設定(高めのストール回転数など)が見えてきます。

③ ロックアップ領域との境目

最近の車は燃費向上のため、30km/h前後からエンジンとミッションを直結(ロックアップ)させます。

  • 25km/h以下で計測することで、直結される前の「流体の粘り」だけでどれだけ駆動力を稼げているかが分かります。ここで駆動力が細い車は、発進でもたついたり、渋滞路でギクシャクしたりする傾向があります。

 

もし発進時にピンク点が理論線から大きく外れていれば、トルコンのストール特性の異常や、発進時のもたつきの原因を特定するヒントになります。

 

 

つまり、どう使えばいい?

フルスロットルは「カタログ値が出るか」のチェックですが、普通走行は「日常の制御が狂っていないか」のチェックになります。

  • フルスロットル: 100%のパワーチェック(車検や重整備後の確認)

  • 普通走行: 制御マップのズレや、経年劣化による効率低下の診断

「いつもの道を走って、いつもの線の上に点があるか」を確認するだけで、立派なコンディション・チェック(予兆診断)になります。

現場で「なんかこの車、元気がない」と思った時に、サッと数値を入れられるのがこのツールの「整備士らしい」使い方でです。

 

 

CVT故障時のグラフ変化

理想の基準線を「実線(カタログ値)」とし、実データを「点線(走行データ)」として表現します。

CVTの故障は、主に次の3つです。

 

1. ソレノイドバルブの故障(油圧制御不調)

ソレノイドバルブの故障は、油圧制御の「麻痺」であり、グラフ上では**「不自然な挙動」**として、抵抗線以外のすべての線に現れます。

  • 変速比(実線): 理想的な変速比(滑らかなカーブ)を描かず、不自然に上下(ハンチング)したり、特定の変速比で固定されたりする。
  • イメージ: 司令塔が狂ったため、ギア比も回転数も駆動もお互いに連携が取れず、ガタガタな動きになる。

 

2. CVTベルトのスベリ(金属間摩擦の破綻)

CVTベルトのスベリは、トランスミッション最大の「致命的なパワーロス」であり、グラフ上では「基準線からの大幅な逸脱」として現れます。

  • 変速比(実線): 理想的な変速比(プーリー比)から外れ、基準線よりも**「ロー(低いギア)」側(グラフ上では高い数値)へ常時ずれる。**
  • 回転数(実線): 駆動力が上がらないのに、変速比(スベリ)により、基準線よりも大きく上へ跳ね上がる(吹き上がり)。
  • イメージ:「回転数だけが上へ吹き上がり、変速比はロー側に張り付き、駆動力が下に沈む」という、絵に描いたような致命的スベリの構図。

 

3. ロックアップの故障(トルコン内部の直結不良)

ロックアップクラッチの劣化・不動は、トランスミッションの「効率悪化」であり、グラフ上では「常時続く小さなロス」または「特定の速度域での振動」として現れます。

  • 変速比(実線): (滑り時) トルコンを介して滑っているため、基準線(直結)よりも常時少し「ロー」側へずれる。
  • 回転数(実線): (滑り時) 変速比(スベリ)により、基準線よりも常時少し高くなる。
  • イメージ: 理想の直結(基準線)ができず、全域で少しずつエネルギーが漏れて(滑って)いる線になる。

 

故障箇所変速比
ソレノイドバルブ理想的なカーブを描かず、ハンチング・固定。
CVTベルト基準線より常時ロー側にずれる。
ロックアップ(滑り)基準線より常時少しロー側にずれる。

 

車購入前の走行性能確認にも、ぜひ活用してみて下さい。

CVTが不調でしたら、買い替えを検討する時期です。無料で査定価格を調べるページも参考に見て下さい。