セレナのエンジン不調はイグニッションコイルが原因【劣化の見分け方】

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この記事ではニッサンのセレナ、C25,C26を例に故障探求方法を解説していますが、トヨタやホンダなど他メーカーでもセンサやアクチュエータは似ているのでエンジン不調の時にこのページを見ると参考になると思います。

 

急に加速が悪くなり、アクセルを踏み込んでも息継ぎをして、しっかり吹け上がらないセレナ。

しかもアイドリングはガタガタ振動して不安定。完全にエンジン不調。

なのに現在はエンジン警告灯は点灯していない。お客様が乗っていた時は警告灯が点灯していたのかもしれないが、メーターを確認していないようなので、点灯したことがあるかどうかわからない。

不具合が発生している車は以下。

不具合車両情報

車種セレナ
年式H22
型式CC25
エンジン型式MR20
走行距離13万km

故障コードやコンピュータ数値が見れる自動車故障診断機とオシロスコープを利用して「社団法人 自動車整備振興会」の整備マニュアルと比較しながらエンジン不調の原因を特定していく。

無駄を省いて要点のみを解説しているので、マニュアルを見ながら順番に故障探求するのが面倒な整備士の方は気楽に見てほしい。

なお、セレナのオーナーは修理費用や劣化具合など参考になる内容。

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 dutyal research motor teamより

 

 

エンジン警告灯が点灯しない故障

エンジン不調になってもすぐにはエンジン警告灯を点灯させない故障もある。

今回のように明らかにエンジン不調だがエンジン警告灯が点灯しないのは珍しい。

エンジン警告灯は通常、部品の状態を感知するセンサの故障か部品を動かすアクチュエータが作動基準の上限や下限を越えると点灯する。

まずはエンジン警告灯点灯と関係するセンサとアクチュエータを以下で紹介する。

主なセンサ
  1. O2センサー
  2. A/Fセンサー
  3. エアフロメータ
  4. クランクポジションセンサ
  5. スロットルセンサ
※1.2は排気ガス濃度を測定。3はエンジンに送る空気量を測定。4はエンジン回転速度とピストンの位置測定。5はスロットルバルブの開閉角度を測定。

これらのセンサがエンジンの今の状態を感知して、エンジンの状態を最適にするために下に示すアクチュエータを作動をさせる。

 

主なアクチュエータ
  1. ISCバルブ
  2. イグニッションコイル
  3. インジェクタ
  4. EGRバルブ
  5. 電子スロットルバルブ
  6. VVTバルブ
1はアイドリングで空気をエンジンに送る。2はプラグに点火。3は燃料噴射。4は排気ガス再循環。5はアクセルによって空気をエンジンに送る。5は吸排気のタイミングを替える。

これらのセンサとアクチュエータは一定の条件を満たすとエンジン警告灯を点灯させる。

例えばエアフロメータの信号電圧が5秒以上0.16v以下になるなどの条件でエンジン警告灯は点灯する。

 

しかし、このセレナはそれだけではエンジン警告灯を点灯させない。

 

 

セレナのエンジン警告灯を点灯させる条件

セレナのエンジン警告灯は2トリップ連続で異常を感知するとエンジン警告灯が点灯する。

1トリップとは
エンジン始動15分間後エンジンOFF10秒以上経過後エンジンON

以上が1トリップになる。この作動を2回繰り返すと2トリップ。

2トリップ連続で同じ故障コードを検出しなければエンジン警告灯は点灯しないが、エンジン始動とアイドリング保持及び最低限の走行するための重要箇所だけは1トリップ検出でもエンジン警告灯は点灯する。

 

エンジン警告灯が1トリップでも点灯する故障一覧

故障すると

  • 走れなくなる
  • エンジンが止まってしまう

このような場合、車が多く通る道などでは、とても危険。

とりあえず安全な場所まで移動させる必要があるため、そういった箇所の故障はエンジン警告灯の点灯と同時にフェイルセーフを働かせる。

 

※フェイルセーフとは最低限の走行をさせる為にセンサとアクチュエータをコンピュータが勝手にコントロールしてしまう事。
すぐに警告灯が点灯する故障個所
  1. エアフロメータ
  2. EGRコントロールバルブ
  3. 水温センサ
  4. スロットルポジションセンサ
  5. 電子制御スロットル系
  6. センサ電源
  7. アクセルポジションセンサ

以上7つの故障はすぐに警告灯が点灯するが「エンジン回転数が2500rpm以上にならない」「アクセルを踏んでもスロットルを多く開かない」などフェイルセーフが働き制限される。

今回はエンジン警告灯が点灯しないので上記以外の故障ということになる。

それでは次からは整備マニュアルに沿って診断を進めて行く。

 

 

OBDⅡ診断機で故障コードを確認

エンジン不調の時はまず診断機を接続して故障コードを読み取る。

エンジン警告灯を点灯させない故障コードもあるので診断機でコード確認するのは基本。

今回検出した故障コード:P0304.P0300
  • P0304は4番気筒のミスファイア
  • P0300は複数気筒のミスファイア

※ミスファイアとは失火。エンジンで正常に爆発できなかった事を示す。

1度故障コードを消去して再検査しても同じコードが検出されたため、この2つは確実。

 

セレナのエンジンは4気筒なので一番後ろの気筒のミスファイアと複数気筒のミスファイアを感知したことになる。

1つの気筒がミスファイアを起こすと複数のミスファイアも検出しやすいので、まずは4番気筒のミスファイアの原因を探すのが優先される。

 

ミスファイアを検知するのはクランクポジションセンサ

エンジンにはクランク角を感知しているクランクポジションセンサがある。

クランクポジションセンサはクランクシャフトの現在の角度を知ることができるため、各シリンダーのピストンの位置が正確に分かる。

下の画像はセレナのエンジンではないが、見やすいので参考にしてほしい。

中央の丸いプーリーがクランクシャフトと繋がっているクランクプーリーという部品。

このプーリーの回りに付いている歯の高さを磁気でクランクポジションセンサが読み取り、「低い高い」を電気で判定して現在どの位置か判断できる。上の画像を見ると歯がない場所があるがここがポイント。

この場所とエンジンのシリンダーブロックのマークが合わさる位置が1番圧縮上死点といい、1番気筒のピストンが一番上に来るタイミングとなる。

クランクポジションセンサはこのような形をしており、クランクプーリーの歯の横にとりつけられている。

歯の無い場所を始点と判定し、コンピューターに現在どの位置か送る役目。送る信号電圧は下のような波形になる。

※波形の空欄がクランクプーリーの歯がない部分

 

ミスファイアが発生するとエンジンが爆発しないため、一時的にエンジン回転が遅くなる。そうなると正常とは異なり波形が乱れる。例えば4番気筒がミスファイアを起こすと下のようなイメージだと思って欲しい。

※この波形はイメージ。実際は全く違う波形なので注意。

このように波形が乱れる位置で失火している気筒を判断している。

そうなると失火している場所は分かっても失火原因はこれだけではわからないので失火に関連する原因を何個か推定してみる。

 

ミスファイアの原因

「ミスファイア=クランク回転数が乱れる」 となる為、ミスファイアの原因は多岐にわたる。

推定原因ピックアップ
  1. 点火系不良
  2. 圧縮不良
  3. 燃料不良
  4. エアーの吸い込み
  5. クランクポジション検出系統不良
  6. O2センサー不良
  7. エアフロメータ不良

この7つが考えられるが、故障診断速度を早めるために可能性の高い箇所(故障事例の多い箇所)から点検していく。

 

 

エンジン不調の故障診断を進める

先ほどの推定原因7つの内、エアフロメータはエンジン警告灯を点灯させるので、原因から除外できる。

エアーの吸い込みも全部の気筒に関係するので除外して考えてみる。

同じくO2センサーも全部の気筒に関係するので除外する。

そうなると、点火、圧縮、燃料、クランクポジションの4つに絞られる。

この中で最も可能性が高く点検が容易な、点火系から点検していく。

 

 

点火時期と燃料噴射のデータモニタを見る

以下の数値はコンピュータ診断機で調べたセレナの実車データから引用。

実車データは比較すると、色々な故障診断にも役立つので是非、修理の参考にしてほしい。

実車データ
テンカジキ1BTDC
基準値
テンカジキ4~14BTDC

イグニッションコイルが不良の場合、点火時期の遅れがある。

実車データを見ると点火時期は基準値以下なので点火時期は遅れている。

 

燃料系統はまず、燃料噴射パルスを見てみる。

実車データ
フンシャパルス2.9msec
基準値
フンシャパルス2.0~3.0msec

燃料噴射は上限いっぱいだが基準値に収まっているので問題ない。おそらくエンジン不調の為に上限まできていると考えられる。

点火時期の遅れを見ると点火系の故障の可能性が強いが、残りの「点火」「圧縮」「クランクポジション」「燃圧」を全て点検して確実な故障探求を目指す。

 

 

イグニッションコイルとインジェクタの波形

故障探求時間を短縮する為に点検する所を選んで作業する。

セレナはインマニがスパークプラグを覆っており、コンプレッションゲージを入れて圧縮点検をするのが困難なので消去法で他の点検を進める。

クランクポジションはセンサ異常の検出はされていないので、点検するとしたらクランクプーリーの歯を目視点検になるので後回しでよい。

燃料も燃圧の点検となると大変な作業になるので、燃料噴射信号だけ点検する。

まずはイグニッションコイルの点火信号電圧と燃料噴射のインジェクターの噴射信号電圧をオシロスコープを使って波形を確認する。

この2つは内部に故障診断回路がないため、オシロスコープが活躍する。

上の赤丸にオシロスコープCH1を繋ぐ。下の赤丸にはCH2を繋ぐ。

下は実際にイグニッションコイルと接続した画像。4番気筒だけインマニの隙間からオシロスコープのプローブを繋げる事ができるので、調べたいコイルは4番につけておくと診断が楽になる。

 

取り込んだ波形が下の画像。黄色がイグニッションコイル、青がインジェクタ。等間隔で安定した信号波形なので問題なさそう。

中央の黄色と青色が少し乱れているが、同じタイミングのノイズなので、この程度は許容範囲かもしれない。

イグニションコイルがプラグ以外でリークしてずれたタイミングでスパークするとこのような波形になる事もある。

リークしているコイルの波形を比較検証する必要がある

そもそもこの2つの信号は断線かショートするとイグニッションコイルやインジェクタの故障コードを出すので問題ないはず。

次は電気的な診断ではなく、機械的な診断をする。

 

 

スパークプラグの点検

スパークプラグを取り外し、目視点検。電極は4番プラグだけ黒く湿っている。

下の画像は一番右が4番気筒のスパークプラグ。

端子部分と白いボディの間に1箇所リーク跡がある。リーク跡は失火の重要なポイント。

リークする原因はスパークプラグの電極不良で他に流れたか、イグニションコイルが違う場所に電気を流したかのどちらか。

このプラグを付けて実際にスパークプラグが点火しているか確認してみたところ、正常に火花が出ていた。

電極で火花が出ているが端子からもリークしているので火花は弱い。

 

シリンダー内では以下のように別の場所でも放電するので分圧されてメインの火花の電圧が低下して失火する。

以下は整備マニュアルの1部だが、イグニッションコイルの放電電圧は20kv以上なので金属部との間が13mm以下だと故障していても火花が飛ぶ場合があり、17mm以上だとイグニッションコイルが故障する場合があるので注意すること。

 

 

 

イグニションコイルの劣化点検

イグニションコイルの目視点検ではスパークプラグとの接続部分のコイル側にもリーク跡があった。

下側のコイルの繋ぎ目がリークで焦げているのがわかる。

コイル先端のキャップを外すとリーク跡がはっきり見える。

コイルの電圧がシリンダー内にかかり、プラグに火が飛ばない状態が時々発生しエンジン不調をおこしているようだ。

スパークプラグの故障かイグニションコイルの故障か調べる為にイグニションコイルのトランジスタの抵抗を計ってみる。

4番コイル3.01kΩ
他3つのコイルコイル約2.56kΩ
新品のコイル2.45kΩ

 

4番のイグニッションコイル

4番のコイルは他のイグニッションコイルより抵抗が大きい。リークによって劣化が早くすすんでいる。

しかし、これだけの故障診断でイグニッションコイルの故障と断定するには少し早い。

実際に入れ替える事で正確な診断になるので、入れ替え方法も下でご紹介する。

「リーク跡がある」もしくは「抵抗が2.60kΩ以上」なら劣化してると考える

 

 

イグニッションコイルの故障の前兆

イグニッションコイルが劣化してくると停車中(アイドリング中)に肩を軽くたたかれたような「カクン」といったわずかな振動が発生する。

初期段階では5分に1度のペースなので、気が付くことはほとんどない。

走行中も発生しているがエンジン回転が高いと失火はかき消されわからない。

もう少し劣化が進行してくると1分に1度のペースでアイドリング振動するので、気が付く。

更に悪化すると走行中もアクセルを踏むと息継ぎがあり、エンジンが吹けないといった症状が現れる。

初期段階で整備工場に持って行っても整備士が現象を確認できずに違う箇所の部品交換をされてしまう場合があるので、症状が頻繁になるまで我慢すると無駄な修理にならない事が多い。

 dutyal research motor team はダイハツのイグニッションコイルの故障探求やスズキのエアフロセンサの故障探求も解説している。

 

 

アイドリング振動&加速不良の修理費用

イグニッションコイルの交換費用

イグニッションコイル9500円/1本×4
故障診断費用4,000円
工賃13,000円
ガスケット類5,000円
合計60,000円

通常だと診断料も追加されるので、もう5,000円ほど高くなる。

 

スパークプラグをセットで交換する費用

スパークプラグ2,500円/1本×4
合計10,000円

イグニッションコイルとスパークプラグの両方を交換すると7万円位の修理費用になる。

安く済ませたい場合はイグニッションコイルとスパークプラグのどちらかだけを交換すればよい。

その為には確実に故障を見極める必要がある。

 

 

 

プラグかコイルの故障を見極める方法

これは誰もが行う方法。イグニッションコイルを別の気筒と入れ替えて診断機の結果を見る事。

4番と3番のコイルを入れ替えてエンジンを始動すると3番の失火を検出された。

と言う事は元々4番に付いていたイグニッションコイルが故障していたという事。

イグニションコイルは4番だけなら簡単に取り外す事ができるが、

1番、2番、3番のイグニションコイルは下の画像ようにインマニを外さなければ付け替えができない。

そうなるとコイルを付け替えてエンジンをかけるだけでも30分以上はかかってしまう。

セレナのイグニションコイルとスパークプラグは平均で10万km前後で故障している。

1から故障診断をしていく手間を考えると走行距離が10万kmを超えているならイグニションコイルとスパークプラグはあらかじめ交換必須条件にしてしまってもよい。

しかし、エンジンの圧縮不良やタイミングチェーンの伸びなどは、高額修理になるので、最低限の故障探求は必要だと思う。

 

 

イグニッションコイルが故障する理由

コイルが故障する理由は「スパークプラグの点検」の項でイグニッションコイルの点火テストの注意事項がヒントになっている。

イグニッションコイルは1次コイルの自己誘導作用と2次コイルの相互誘導作用で数万ボルトの電圧を発生させるので、放電が失敗するとイグニッションコイルはダメージを受ける。

放電の失敗はスパークプラグの失火。

スパークプラグが劣化して電極の隙間が大きくなったり、電極が消耗して放電が減るとイグニッションコイルの負担になる。

なのでスパークプラグを早めに交換する事でイグニッションコイルの劣化や故障を少なくすることができる。

下のボタンを押して「LINEアプリでログイン」するとこのページのアドレスを指定したお友達にだけに送ることができます。不具合解決のヒントにしていただけましたらば幸いです。

 

 dutyal research motor teamより

 

 

 

セレナのエンジン不調の原因と修理費用

平成22年式 型式CC25 エンジンMR20 走行130000KM
メーカー 車種ニッサン セレナ
症状アイドリングでガクガク振動、加速しない
アクセル踏むと ボコボコ音
臭い
排気ガスが臭い
振動 
アイドリングでガタガタ
原因
イグニションコイルのリーク
作業内容イグニッションコイルとスパークプラグを交換
作業難易度[star rating = "4"]難しい 点検や交換作業は整備士でないと別の故障を引き起こす場合もあるので、安易な作業はおすすめしない。
修理代
イグニッションコイルとスパークプラグの交換で合計70,000円
後の支障
不調時は排気ガスが高温になるため、O2センサや触媒の劣化が進む。不具合箇所のバルブなどにカーボンが蓄積しやすく、圧縮低下などになりやすい。
参考

 

 

 

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質問者: 不具合のある車名と内容を記入して下さい。細かく記入すると正確な回答が得られます。

回答者: 整備士及び車に詳しい方の回答をお待ちしております。なおホームページもしくはSNSのアドレスを教えていただけますと自動車販売店、車検店、買取店として当サイト内で1ページ作成してご紹介することもできます。お気軽にご利用して下さい。

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