パワーウィンドウが時々動かないといった軽度な故障があります。
こういった故障の原因を特定するのは少し難しいです。
常に故障している状態でしたら電気配線を区分けして電圧を測定し「ここまでは電圧がある」といった具合で電気の流れを見ていけば、故障箇所に辿り着けます。
しかし、時々正常になると、いったいどこが故障しているか判断できません。
そこで、まずは故障を徹底的に再現します。
ここでは、よくある運転席のパワーウィンドウスイッチの故障が原因で助手席のパワーウィンドウが下がるけど上がらないといった症状について解説します。
その時に助手席スイッチでも動かないので、助手席のスイッチと助手席のパワーウィンドウモーターも疑ってしまうと思いますので、誤診を誘う注意点も交えて解説いたします。
国家整備士が日本自動車整備振興会の整備書に従って修理します。
自動車整備振興会の整備資料を見ながら修理します。
検査車両:スズキ エブリィ DA17W
目次
故障を再現させるのは超重要
常に動かないのでしたら、ここの作業は飛ばして見て下さい。
時々、上がらなくなる車は、ここから見て下さい。
特にスズキ自動車のエブリィ、スペーシア、ハスラー、ワゴンR、クロスビーなどはこのような故障が多発しています。
ニッサンですと、クリッパー、ルークスです。
一番重要なのは動かなくなった瞬間です。
ですので、運転席のパワーウィンドウスイッチを操作して動かなくなるまで、何度も上げ下げして下さい。
そして動かなくなった瞬間、操作を中断して1度手を離し落ち着いて下さい。
そして次は優しくスイッチを上げる方向にだけ操作してみて下さい。
※下げる方のスイッチは絶対に押さない事❗ここで下げる方に押してしまうと復活してしまう場合があります。なぜ復活してしまうのか?はページ後半で解説しています。
何度か上げる方向に操作して動かない事が確認できましたら慎重に電圧と抵抗を測定していきます。
整備書通りに運転席パワーウィンドウスイッチの電圧を点検
まずは整備書に記載されているパワーウィンドウスイッチの端子電圧を計ります。
今回は助手席のパワーウィンドウを上げる時だけの不具合なので見るのは
- 6番 UP回路とアース
- 7番 DOWN回路とアース
だけです。スイッチをアップ操作して6番を測定すると約14Vありましたので正常です。
これだけですとスイッチは正常と思ってしまいますが、電気部品はアースに落ちて回路が成立します。
パワーウィンドウスイッチはUP回路とDOWN回路の電源とアースを切り替える事で、パワーウィンドウモーターを正転と逆転をさせ、上げ下げが可能になります。
パワーウィンドウスイッチのアース回路を点検
先ほどの整備書を見ると運転席パワーウィンドウスイッチは何も操作しない時はパワーウィンドウアップ回路もパワーウィンドウダウン回路もアースに接続されています。
UP操作では6番回路に12Vがきているので、DOWNの7番は何もしなければ20番のアース回路に繋がっているはずです。
7番と20番の導通を見るために抵抗を計ってみました。
7番と20番の間の抵抗は2.1Ωでした。
導通はありますが抵抗が大きいです。
配線を挟んでいるので少しは抵抗が大きくなりますが、アース回路なら1.0Ω以下になります。
パワーウィンドウを下げる事はできるので、6番のアースは正常です。
今度は正常な6番の抵抗を測定して7番の抵抗と比較してみます。
0.2Ωでした。7番よりだいぶ小さい数値です。
正常なアース回路は、この位の抵抗値になります。
この時、スイッチの内部はどうなっているのでしょうか?
助手席のパワーウィンドウが下がるけど上がらない原因が判明
スイッチを分解して上げる回路のアース側を見てみます。
パワーウィンドウスイッチの分解手順
今回はスイッチを交換する予定なので、交換前に内部がどうなっているか見てみます。
整備書にはパワーウィンドウスイッチの分解方法は載ってませんので、慎重に分解していきます。
1、パワーウィンドウロックスイッチを外す
クリーム色の部品の左右に小さな突起があります。
この突起が上のパワーウィンドウロック切替スイッチにはめ込むので、左右に揺さぶって広げるような感覚で上に外します。
2、両サイドの突起を6箇所外して基盤を取り出す。
ビス留めはありません。これもはめ込んであるだけです。
3、スイッチ稼働部品を分解
シルバーのカバーの両サイドをベビードライバーで少し広げて外します。
組み付けに間違いがないように、外した部品は向きを揃えて置きます。
スイッチ接点が酸化して抵抗が増えたのが原因
下の画像はスイッチのレバー側です。
こちらは押さえるだけなので電気接点はなく、放電もありません。
次の画像は裏の電気接点側(基盤側)です。焦げているのが見えます。
接点が着いたり離れたりすると空気中でアーク放電します。
アーク放電は金属の表面を融解、酸化、蒸発などで焦がし抵抗になります。
このような状態では金属部分が露出している個所が接しなければ電流は流れません。
スイッチ操作を何度も繰り返すと接地する時もあれば接地しない時もあり、そうなるとパワーウィンドウが下がるけど、時々上がらないといった症状が現われます。
ペーパーやすりとパーツ洗浄剤で焦げを取り除き、組み付けると動きました。
しかし、接点は融解によって変形しているので、故障が再発する可能性があります。
エブリィDA17のパワーウィンドウスイッチ交換費用
パワーウィンドウスイッチ本体 | 26000円 |
故障診断 | 3500円 |
交換工賃 | 1500円 |
合計 | 31000円 |
割りと高額修理です。車をそろそろ買い換えようと思っているなら、良いタイミングかもしれません。
買い換えるなら、しっかり修理せずに先ほどの接点の応急修理か次で紹介する応急処置で次の車が納車されるまで待つのがお得です。
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パワーウィンドウを上げる応急処置
パワーウィンドウスイッチの故障で上がらない場合、7番をアースさせることでパワーウィンドウを上げることができます。
- スイッチを上げる方向に引く
- カプラー裏の7番に配線を差し込む(下画像参照)
- その配線を車の鉄部分に当てる(アースさせる)
下のように7番と20番をカプラー裏で繋げてもいいです。
これでガラスは上昇しますが、配線図や配線の配置は年式、グレードによって細かく変わります。
間違うとコンピューターを破損する場合もありますので、作業を行う際は必ず整備士に相談して下さい。