ハイエース排ガス浄化装置の修理費用【DPF強制燃焼が終わらない時のリセット方法】

メーターにDPFのマークとエンジン警告灯が点灯したハイエース。

下図は整備マニュアルから抜粋したものですが、ここでは、このDPFランプとエンジン警告灯が同時に点灯した原因を調べました。

DPFもDPRも呼び方は違いますが内容は同じです。

←こちらがエンジン警告灯です。

 

チェックランプともいいますが、今回はこのランプも同時に点灯していました。

車両: ハイエース KDH20系 エンジン 1KD

 

整備マニュアルを見るのが面倒な整備士の方やDPF警告灯やエンジン警告灯の点灯理由と修理費用を知りたい方は是非見て下さい。

なお、車検を安くした方は「車検どこがいい?人気ランキング」も調べましたので参考にして下さい。

 

 

排ガス浄化装置の修理費用

強制燃焼費用3,500円
リセット3,000円
エンジンオイル交換6,000円
合計12,500円

上記作業で直らない場合は触媒の交換になります。

触媒の交換が30万円前後です。

浄化装置の汚れがひどい場合は、インマニも外して清掃になるので40万円ほどの修理になる事もあります。

 

強制燃焼で直らなくても洗浄剤を注入することで直るケースもあります。

下でご紹介する「強制燃焼が終わらない時のリセット方法」の項目も参考に見て下さい。

 

 

 

ハイエースのDPFランプ点灯は触媒劣化が原因

DPF(DPR)はマフラーの途中に付いている触媒です。

下記画像が実物です。

 

センサーを多数使ってコンピュータで排気ガスの濃度や触媒の劣化具合を管理しています。

触媒は排気ガスを浄化する装置です。

今回は排気ガスを浄化する装置に不具合が発生したためにDPF警告灯が点灯しました。

 

DPR触媒にPMが堆積すると自動的にPM強制再生制御(燃焼)が実施され堆積と再生を繰り返しますが、「エンジンをかけてすぐ切る」を繰り返したり、「アイドリングで長く停車している」といった乗り方が多いと強制燃焼しきれずにPMが触媒内部に残ってしまいます。

PMとは排出ガスに含まれるCOやHCの微粒子。

 

PMの強制再生は触媒を高温にして除去しますが、高速運転などで回転数を上げて燃料を濃くしなければ高温にはならず、どんどん堆積してしまいます。

上の図はハイエースの整備マニュアルの1部ですが、触媒の温度を上昇させるとPMは消えてなくなるのがわかります。

今回チェックランプが点いたハイエースの乗り方を聞くと街乗りが多かった為、PMの強制再生ができず、DPF警告灯が点灯したものと考えられます。

 

エンジン警告灯も点灯しているので診断機を使って詳しく正確な原因を調べてみました。

 

 

 

エンジン警告灯は排ガス浄化装置が原因

エンジン警告灯が点灯している場合、OBDⅡのコンピュータ診断機で故障コードが確認できます。

エンジンを診断してみると

  • P1608 :エンジン出力不足
  • P1609 :空燃比濃い
  • P200C :高排気温度
  • P244B :DPF差圧大
  • P2463 :PM過堆積

この5つの故障コードがでていました。それぞれ故障コードの解説をします。

P2463の警告灯点灯理由
走行中、PM強制再生が必要な表示(ランプ点滅)が出てからも走行を継続してPM堆積量が限界を超えた場合
P244Bの警告灯点灯理由
触媒差圧が0.27以上

触媒差圧は触媒前後についている圧力センサーの圧力差です。差が大きいと触媒が詰まっている事が考えられます。

 

P200Cの警告灯点灯理由
DPR触媒温度が1000°Cを越える
P1609の警告灯点灯理由
クウネンヒセンサ(A/Fセンサ)の出力値が閾値以上
P1608の警告灯点灯理由
吸排気系、燃料系、冷却系の故障・異常によってエンジン出力の低下が発生した場合

以上が今回の全部の故障コードですが、これを見る限りではPMが堆積してDPFが詰まり差圧が大きくなり、PMを除去する為に燃料を濃くし、触媒が高温になりすぎていると考えられます。

 

さらに堆積が多い為、排気ガスが詰まりエンジン出力低下にもつながっていると思われます。

 

DPFの差圧大とは?下図の整備マニュアル参考

上図中央にDPR排気差圧センサーがあります。

このセンサーが触媒前と触媒後の圧力を比較してどれだけPMが堆積しているか計算しています。

 

修理後にデータを比較するために、直す前の現状のエンジンセンサーからの数値を以下に保存しておきます。

参考:【エンジン警告灯】ハイエースのデータ

 

故障コードが複数あるので故障コードを消去し、もう一度試運転して故障コードの絞込みをします。

 

 

 

強制燃焼でエンジン警告灯を消す

故障コードを消去するとP2463のPM過堆積だけ残りました。

これで原因が判明しました。

 

後はPMを強制再生(強制燃焼)すればいいのですが、再生できないほど堆積してしまうとDPF触媒を交換しなければいけなくなります。

 

車には故障発生時にセンサーのデータを保存する便利な機能があります。

保存するフリーズフレームデータを見て、どれだけPMが堆積しているかみてみました。

 

 

 

触媒詰まりの特徴、PM過堆積P2463と高排気温P200C

P2463とP200Cの2つのコードがフリーズフレームデータとして記録されていました。

参考:ハイエースのフリーズフレームデータ一覧

以下の表はエンジン警告灯点灯した瞬間のDPF関連の数値です。

DPR/DPNR差圧22.585 kPa
触媒差圧0.2797
DPR差圧異常/過堆積異常
DPR高排気温異常
PM堆積量割合76 %

PM堆積量割合が76%と、かなり高く、触媒が詰まる寸前です。

排気温度も異常となっています。

 

触媒差圧が0.27以上だと出口が塞がっている可能性が高いですが、「0.279」とても微妙なラインです。

触媒が塞がっているのを解消するには「触媒を交換する」か「強制再生」の2つです。

 

触媒は交換するとなると高額なので、とりあえず強制再生してみました。

 

 

 

DPF強制再生を実施して警告灯を消す

このハイエースには強制再生スイッチがない為、診断機で強制再生を実施します。

スイッチがある車なら自分でも可能ですが、なければ整備工場にお願いするしか強制再生の手段はありません。

 

PMの強制再生時間は15分~40分です。

※堆積量によって再生時間が変わる。

 

その間は回転数と燃料噴射が上昇する為、エンジン及びマフラーが高温になりやすいので安全な場所で行って下さい。

また、アクセル操作を行っても強制再生が終了してしまうので、長時間動かさなくていい場所で行う必要があります。

 

以下の表はDPF強制再生した後のDPF関連の数値です。

 再生前→再生後
DPR/DPNR差圧22.585 kPa→1.050 kPa
触媒差圧0.2797→0.1187
DPR差圧異常/過堆積異常→正常
DPR高排気温異常→正常
PM堆積量割合76 %→2%

PM堆積量割合が76%→2%と、大きく減少しました。

DPR差圧と触媒差圧も減少したのでDPF触媒を交換しなくても済みました。

 

他の数値は下記ページを参考にして下さい。

参考:ハイエースのフリーズフレームデータ一覧

 

強制再生するとエンジンオイルも高温になり、燃料も濃くなるので、燃焼室に入った燃料が燃焼しきれず残り潤滑しているエンジンオイルに混ざってしまいます。

エンジンオイルに燃料が混ざると潤滑経路にあるエンジン内のパッキンを劣化させてしまうことになるので強制再生後はエンジンオイルの交換も必要になります。

 

車検の時に診断機を繋いでPM堆積量割合を調べてもらって必要に応じて、強制再生してもらうか下で紹介する予防洗浄をしてもらうのがお勧めです。

 

 

DPF強制燃焼が終わらない時のリセット方法

DPFの強制再生を手動スイッチで始めて60分経過しても終わらない時でも、再生は自動で終了してしまいます。

その場合、触媒の中のPM(スス)が多すぎて浄化しきれていません。

 

DPFの警告灯は残りますが、エンジン警告灯が消えていればバッテリーのマイナス端子を60秒ほど外すとコンピューターがリセットされて消える事があります。

コンピューター診断機でPM強制再生を行った時は必ず診断機でリセットして、なおかつバッテリーも外して完全にリセットする必要があります。

 

強制再生を行ったあとはエンジン警告灯やDPF警告灯が点灯していても必ずリセットして下さい。

そうすることで警告灯が消えれば後は自身で高速走行をして触媒を綺麗に保つようにすれば少しずつ改善していくかもしれません。

 

出来ればDPF洗浄剤などを燃料タンクに注入する事をおすすめします。

PM堆積がひどい時は触媒を直接洗浄する洗浄剤もワコーズで販売されているので試すのもいいと思います。

 

 

 

エキゾーストフューエルアディションインジェクタの詰まり

こういった状態になるには燃料系統も詰まりかけている事が多いです。

エキゾーストフューエルアディションインジェクタは触媒の前に燃料を噴射する装置です。

参照:整備マニュアル

上の図のようにPM再生時はエキゾーストマニホールドのすぐ後ろで燃料を噴射しています。

 

触媒を高温にするためですが、こちらもPMによって詰まると強制再生もできなくなります。

EGRによって排気ガスをエンジンに再循環させるのでコモンレールやインマニもPMが堆積しやすくなります。

 

ですのでなるべく早めに強制燃焼させるように定期的に高速道路の走行をして下さい。

強制燃焼が出来なければDPF触媒、インジェクタなど多くの部品を交換しなければならなくなります。

 

ワコーズのDL-1やPM浄化剤を使って定期的に洗浄して下さい。

 

 

 

DPFとエンジン警告灯の原因と修理費用

平成24年式 型式KDH20 走行180000KM
メーカー 車種トヨタ ハイエース
症状DPF警告灯 エンジン警告灯
アクセルを踏むとこもったような音
臭い
特になし
振動 
特になし
原因
DPF触媒にPM堆積
作業内容DPF強制再生
作業難易度[star rating = "2"]簡単 DPF再生スイッチがあれば誰でもできる。スイッチがないと整備工場に頼むが1時間で完了。その後、エンジンオイル交換も必要になる。
修理代
DPF強制再生とエンジンオイル交換10,000円。DPF触媒とインジェクタ交換になると30万円以上。
後の支障
DPF触媒、インジェクタ、コモンレール、EGRなどがPMの詰まりで動かなくなる。
参考

 

 

 

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