エアコンのスイッチを入れるとカチカチ音がしてエンジンも振動しています。
少し違和感を感じる症状です。
エアコンの効きが弱く、オーバーヒート警告灯も点灯する時もありました。
走るとエアコンが効きますが、アイドリングでは効かない時もあれば弱い時もあります。
故障診断をして、エアコンが効かない原因とオーバーヒートの原因を調べたところ、電動ファンが故障していました。
ここではエアコンが効かない原因を調べていく故障診断方法と修理費用をご紹介します。
スズキ ハスラー MR41S 8万km
目次
エアコンのマグネットクラッチの音が重要
まず最初に簡単なコンプレッサーの作動を見てみました。
エアコンのスイッチを入れてコンプレッサーから「カチ」といった音を聞いて下さい。
この音はマグネットクラッチの音ですが、この音でわかる事があります。
- エアコンスイッチの良否
- コンプレッサーヒューズの良否
- コンプレッサーリレーの良否
- マグネットクラッチまでの配線の良否
- エアコンガスが入っているか
音だけでこれだけ判断できるので、まずはここから点検していきます。
「カチ」といった音が聞こえたので上記5つは良好ということになりますが、エアコンガスは少量でも入っていればマグネットクラッチは作動するので適量かどうかまでは判断できません。
なので次はエアコンガスを点検するのが一般的ですが、次項はエアコンが効く条件を解説します。
エアコンが効かない時に点検する所
エアコンが効くまでの流れを説明します。
最初にコンプレッサーを作動させ、ガスを圧縮してコンデンサに送りファンで冷やします。
次にガスをエキパンを通過させ室内のエバポレーターに噴射し気化させます。
気化熱でエバポレーターを冷やし、そこにブロワモーターの風を当てて室内に冷たい風を出します。
簡単に説明すると以上ですが、この内容を整理すると
- コンプレッサーが作動すること。
- コンデンサーファン(電動ファン)で冷やすこと。
- エキパンで噴射すること。
- 噴射するガスが適量であること。
- エバポレーターが詰まっていないこと。
- ブロワモーターが風を出すこと。
この6つが正常でなければ冷えませんが、まずはコンプレッサーの作動音はしているので2番から点検します。
なお、ハスラーはエアミックスモーターが故障してエアコンが効かなくなる場合もあります。
暖房の調子も悪いようならハスラーのエアミックスモーターの異音を紹介しているページも参考にしてほしい。
電動ファンが回らない原因を調べる
コンプレッサーのマグネットクラッチが入るのと同時に電動ファンが回るはずですが、このハスラーは回っていませんでした。
電動ファンの故障なら走行中は電動ファンを使わなくても走行風でコンデンサーが冷やされるので、「走行中はエアコンが効くがアイドリングでは効かない」といった症状が納得できます。
電動ファンの点検
電動ファンモーターは12Vの電圧をかけて回すので、電動ファンモーターのカプラを外して電圧を測定します。
0Vだったので、その前の部品を点検します。
図1.電動ファン回路図
ハスラーの電動ファンの配線図を簡単に書くと上の図になります。
モーターにかかる電圧は0Vでした。
上の図でいうとモーター左側の電動ファンリレー線の電圧です。
右のアース抵抗を測ると導通があるのでアースは正常。
次はその配線の左にあるリレーに入る電圧を測っても0Vでした。
そうなるとヒューズ切れか、ヒューズからリレー間に断線のどちらかです。
ヒューズを見るとヒューズが切れていたのでヒューズが切れる原因調べました。
ヒューズが切れるタイミングが故障診断のヒント
電動ファンのヒューズは比較的大きな30Aのヒューズを使っています。
モーターを回すのはランプ類を点灯させるより大きな電流が必要です。
※ヒューズのアンペアを見れば電気の消費量が感覚的にわかるので便利。アンペアの大きなパーツを動かせばバッテリーの消費が早くなるので、バッテリーが劣化気味の時はアンペアの大きい電気部品を使わないなど、気を付けることもできる。
30Aのヒューズが切れる原因は30A以上の電流が流れた時か、ヒューズが劣化してる時です。
まずはヒューズを取り付けてみるが、故障診断をしているので下記順番で作業します。
- キーOFFでヒューズをつけてヒューズ切れを確認
- エアコンOFFでキーONにしてヒューズ切れを確認
- エンジンをかけてヒューズ切れを確認
- エアコンONでヒューズ切れを確認
- 他の電装品をONにしてヒューズ切れを確認
この順番で見ていき、どの時点でヒューズが切れるか確認します。
- キーOFFではヒューズは切れなかった。
- エアコンOFFでキーONでもヒューズは切れない。
- エンジンをかけてもヒューズは切れない。
- エアコンONでヒューズ切れが発生
エアコンONで電動ファンのヒューズが切れるのがわかったので、次はどこが原因なのかを調べます。
リレーとヒューズの場所
リレーとヒューズはバッテリー右側のヒューズボックス内にあります。
図1.で解説するとエアコンをONにするとリレーのコイルに電流が流れ、リレーの接点がつながり、バッテリ電流がモーターに流れます。
このハスラーはリレーの接点が繋がった瞬間に30Aのヒューズが切れました。
リレーの前でショートしていればエアコンのスイッチON、OFFは関係なくヒューズは切れるはずです。
ですのでリレーから電動ファンモーター間のショートが原因だと思われます。
モーターのカプラーを外してカプラーの電源側とボディアースの抵抗を測っても導通はないのでショートはしていないようです。
後はモーター内部しか考えられない。
電動ファンの抵抗値で故障か判断する方法
電動ファンモーターの内部抵抗を測定すると0.2Ωでした。
サーキットテスタの抵抗もありますが、12Vで30Aのヒューズが切れるのを単純にオームの方法則 R=V/I で計算すると0.4Ω以下になります。
リレーや配線抵抗をプラスしてもこれではヒューズが切れるのは当然です。
モーターの中でショートしているようです。ちなみに新品は1.2Ωでした。
電動ファンを交換してエアコンの効きとオーバーヒートが直っているか確認します。
ハスラーの電動ファン交換方法
- フロントバンパーを止めてるクリップを外す。
- フロントバンパーを両サイドに広げるように外す。
- フロントバンパーを手前に外す。
上はバンパー裏の画像。フォグランプの下付近に緑のクリップで固定されています。
- ラジエーターとメンバーを止めてるボルト2本外す。
- ラジエーターアッパーホースを外す。
- ラジエーターとコンデンサーを手前にずらす。
- ファンシュラウドの上側2本のボルトを外す。
- ファンシュラウドを上に引き抜く。
ファンモーターのセンターボルトを外し、フィンを外す。
裏から3本の8mmボルトを外してモーターを交換する。
それほど難しい作業ではないので、車好きな方ならご自身で交換できると思います。
ハスラー電動ファンの交換費用
ファンモーター | 15,000円 |
工賃 | 12,000円 |
ロングライフクーラント | 3,000円 |
合計 | 30,000円 |
電動ファンはエアコンが効かないだけでなくオーバーヒートにもなるので早く修理するようにして下さい。
オーバーヒートして水温警告灯が点灯する
電動ファンが故障するとエアコンが効かないだけでなく、エンジンの冷却水温を下げることもできなくなります。
冷却水温が下がらないとメーターに水温が高温になると点灯する「赤色」の水温警告灯が点灯します。
エアコンが効かなく、水温警告灯もつく場合は、電動ファンの故障の可能性が高いです。
このような場合はエアコンガスよりも先に電動ファンのリレー、ヒューズ、本体の故障を疑って故障診断していく方が早く解決します。
「エアコンが効かない」+「水温警告灯」=「電動ファンのヒューズ、リレー、モータのどれかの故障」と考えて下さい・