BSFCマップの計算式と燃料消費率【低燃費は高速走行】

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BSFCマップ

スペック表を元にエンジン性能曲線図(1NZ-FXE)を作成し、正味燃料消費率(BSFC)と燃費(km/L)をスキャンツールのデーターモニターの数値で計算する方法を解説します。

 

スキャンツールは数千円程度のものでもデータモニターが見れる商品があるので、興味のある方はスキャンツールを購入して、世界で1つだけのあなたのBSFCマップを作って下さい。

 

燃費が良い走りを知りたい方は速度と燃費,BSFC,負荷を比較するグラフを自動作成するページも参考にして下さい。

 

 

BSFC燃料消費率マップ自動計算

下のエンジンスペックの入力が終わりましたら「性能曲線を更新」ボタンを押してください。

「正味燃料消費率を計算(BSFC)」フォームでデータを新しくしましたら「BSFCの点を追加」ボタンを押してください。多数追加していきますと等高線が描かれたBSFCマップが出来上がります。

 

BSFCマップ

①~⑧を更新後に下のボタンを押してグラフに移動して「BSFCの点を追加」ボタンを押してください。

グラフへ移動

 

次項で上の計算フォームの入力方法、グラフの見方、数値の入力方法、計算式を解説します。

 

 

 

正味燃料消費率と燃料消費量の計算方法

入力間違いがあると正しく計算されませんので、計算フォームに入力する前に、ここの解説を必ず読んでから入力して下さい。

 

 

必要なデータモニター項目

データを取得するスキャンツール(診断機)によって名称や単位が違います。

トヨタやニッサン、ホンダ、マツダ、スバル、ミツビシ、ダイハツ、スズキなどの車種の違いでも名称や取得できるデータが変わってきます。

データ項目名を解説しますので、入力の参考にして下さい。

 

BSFCを計算するのに必要なデータ

※エンジンスペック内は全部入力する!

  1. エンジン回転数
  2. エンジン負荷%
  3. 吸入空気量 g/s(わかれば入力する)
  4. 空燃比補正率%(わかれば入力する)
  5. 空燃比学習補正率%(わかれば入力する)
  6. 空燃比補正量(わからなければ1を入力)
  7. 燃料噴射時間 ms(わかれば入力する)
  8. 燃料噴射10回分(わかれば入力する)
  9. インジェクタ容量(自動計算)
  10. 燃料噴射時間の噴射量(自動計算)
  11. 空気量の噴射量(自動計算)
  12. 燃料10回分の噴射量(自動計算)
  13. チェックする

この13でBSFCのグラフが描けます。

赤はのいずれか1つを入力すれば青のいずれか1つが計算できるので、⑬をチェックすれば完成です。

 

BSFCの等高線を作成していく場合は「数値を変更してグラフの追加ボタンを押す」を繰り返せば完成します。

「エンジンスペック」は1度入力すればページを更新しない限り保存されます。

 

赤色入力項目の解説

  • 吸入空気量
  • 燃料噴射時間
  • 燃料噴射10回分

入力すると自動で計算され、「計算した1時間噴射量」に数値が表示されます。

スキャンツールで燃料噴射量と表示されていても実際は燃料噴射量10回分なので注意して下さい。

 

⑬で数値がわかる項目を選択しますが、どの数値を入力したか選んで下さい。

吸入空気量を使ったデータが一番精度が高いので、なるべく吸入空気量で算出して入力して下さい。

次は項目の解説です。

 

 

入力するデータモニターを解説

車速 km/hで表示
時速で表します。BSFCのグラフ作成には使いません。燃費を算出する場合は入力して下さい。グラフ作成だけでしたら空欄や違った数値が入力されていても問題ありません。
回転数 rpmで表示
エンジン回転数やエンジン回転速度などと表示されます。
空気量 g/sで表示
吸入空気量やエアーフロー、空気流量などと表示されます。
空燃比補正率 %で表示
O2センサーやA/Fセンサー補正と表示されます。短期補正とも書かれる場合があります。
空燃比学習補正率 %で表示
O2センサーやA/Fセンサー補正と表示されます。長期補正とも書かれる場合があります。
空燃比補正 表示単位なし
空燃比λや空燃比、A/F目標、燃費トータル補正量などと書かれています。空燃比補正率がわかれば、この項目は入力不要です。単位の記載がなく、0.799~1.399の間になっているのが特徴です。%表示の場合は空燃比補正率に入力して下さい。
エンジン負荷 %で表示
絶対負荷値、計算ロード値などと表示されます。項目にエンジン負荷がない場合はフォームで算出できます。
燃料噴射時間 msやmsecで表示
燃料噴射パルスとも表示されます。msやmsecで表示されます。メーカーによっては噴射時間を噴射量とも表示されますが、単位がg/sなら燃料噴射量で、単位がmsなら噴射時間となります。
燃料噴射量 mlで表示
燃料噴射量10回分とも表示されます。10回分と表示されていなくてもスキャンツールの燃料噴射量に表示されるのは10回分です。

以上が計算に必要な項目ですが、車によって、存在する項目と存在しない項目があります。

しかし、燃料噴射量の項目がなければ、吸入空気量か燃料噴射時間がわかれば燃料噴射量を算出できます。

 

エンジン負荷がなければ、吸入空気量や排気量でエンジン負荷を算出できます。

吸入空気量もわかるデータだけで算出できます。

わかる項目を入力すれば計算できるようになっていますので、わかる所だけでも入力してみて下さい。

 

 

BSFC計算する為のデータ取得例

ここではトヨタの初期型アクアで実際にBSFCを計算してみました。

アクアは時速50km以下ですと頻繁にEV走行になっしまうので、燃費はカタログ通りに良くなると思います。

 

今回はエンジン走行に切り替わる高め(60km/h)以上の速度での燃費に焦点をあてました。

 

エンジン燃費を良くするには軽いアクセルの踏み込みで、一定速度で走るのが最適だと思っていたので下の条件で燃費が最も良い運転方法と速度を調べてみました。

  • 抵抗のない平坦な道路
  • 微少アクセル踏み(開度10%以下)
  • 低回転数(1500rpm以下)

 

この3つを前提にして時速60km、時速70km、時速80kmの正味燃料消費率(BSFC)を求めた所、エンジン負荷が高く回転数も高い時速80km時の燃費が最も良い事がわかりました。

 

直感とは逆の結果です。

燃料消費率が良ければ燃費も良いわけではありませんでした。

 

変速比とのバランスが大きく関係しているようですが、少燃料でなるべく力を抑えて走行するより、多燃料で力を十分に発揮した方が無駄が減るようです。

エンジン性能曲線図は一般公開されているカタログのスペック表で作れますが、BSFCの計算はスキャンツールが必要です。

 

ここのデータはバンザイ製のスキャンツールMST-7Rのデータモニターで取得します。

データ例:アクア実車データ

 

アクアで取得できる項目は

  1. 車速km/h
  2. エンジン回転数rpm
  3. エンジン負荷%
  4. アクセル開度%
  5. 燃料噴射量10回分ml

この5つです。

 

加速中や減速中ですと、同じ回転数、速度でも燃料噴射量が変わるので、一定のアクセルワークを判断するためにエンジン負荷とアクセル開度も同時に記録します。

アクセル開度は加速や減速にならない、5%~10%の間で一定の速度になるように調整します。

 

下は実際に走行して約1秒おきに連続して取得したデータの1つです。

上の計算フォームでは、このデータを初期値にセットして計算してあります。

車速57km
回転数1496rpm
エンジン負荷68%
アクセル開度5.8%
燃料10回噴射量0.150ml

このデータで時速57km一定走行のBSFCを計算します。

 

 

BSFCの計算式 

最初に下記スペック表で「燃費・性能・詳細スペック」を見て最高出力と最大トルクを上記フォームに入力してエンジン性能曲線図を作成します。

参考:グーネットスペック表(ここでは初期アクア)

 

次は時速57km時点のエンジン回転数を上のフォームに入力して57km/h時点の最大トルクを出します。

エンジン性能曲線図はフルスロットル(エンジン負荷100%)のデータで作成しているので、エンジン負荷68%を入力してフォームの裏側で負荷適応トルクを算出しています。

 

次に算出した負荷適応トルクの時の出力を以下の式で計算します。

$$\text{出力 } P \ (\text{W}) = T \ (\text{N}\cdot\text{m}) \times \omega \ (\text{rad}/\text{s})$$

この式に下の式を代入します。

$$\omega \ (\text{rad}/\text{s}) = N \ (\text{rpm}) \times \frac{2\pi \ (\text{rad}/\text{回転})}{60 \ (\text{s}/\text{分})}$$
 
 
$$P \ (\text{kW}) = \frac{T \ (\text{N}\cdot\text{m}) \times N \ (\text{rpm}) \times (2\pi/60)}{1000}$$
 
Tは負荷適応トルクです。Nは回転数です。計算すると8.5になりました。

$$ P =  \frac{54(N・m)×1496(rpm)}{9549} = 8.5kW$$

 

燃料消費量をこの出力で割った数値がBSFCなので、後は燃料消費量を計算します。

1気筒あたりの噴射回数(1時間あたり)は

$$ 1496rpm × \frac{1}{2}(回/回転数)×60分/h = 44880回/h/cyl $$

1気筒 10回噴射で 0.150 mL なので、エンジン全体の 1時間あたりの流量は

$$ Ctotal(L/h)= \frac{0.150mL}{10回}×44880回/h/cyl×4気筒×\frac{1}{1000}=2.693L/h$$

燃料質量 (F) の計算

$$ F \ (\text{g/h}) = C_{total} \ (\text{L/h}) \times \rho_{fuel} \ (\text{g/L})$$

 

$$F = 2.693 \ \text{L/h} \times 750 \ \text{g/L} \approx **2019.8 \ \text{g/h}**$$

 

BSFC の計算

$$\text{BSFC} = \frac{F}{P} = \frac{2019.8 \ \text{g/h}}{8.5\ \text{kW}} \approx **237.6 \ \text{g/kW} \cdot \text{h}**$$

エンジン種類BSFCの最良値の目安
一般的なガソリンエンジン250 ~300 g/kWh
最新の高効率ガソリンエンジン230 ~240 g/kWh

この237.6g/hkWhは高効率のエンジンのようですが、どの程度なのか判断が難しいので、一般的に燃費の良し悪しを判断するリッター当たりの走行距離を出してみます。

 

 

燃費の計算式

走行速度と 1時間あたりの燃料消費量(体積)から燃費を計算します。

燃費の計算式は以下になります。

$$\text{燃費} \ (\text{km/L}) = \frac{\text{走行速度} \ (V) \ [\text{km/h}]}{\text{燃料消費量} \ (C_{total}) \ [\text{L/h}]}$$

速度と消費量を代入すると

$$\text{燃費} \ (\text{km/L}) = \frac{57 \ \text{km/h}}{2.693\ \text{L/h}} \approx **21.2 \ \text{km/L}**$$

21.2km/Lです。

ハイブリッドのアクアですが、ガソリンだけでも、これだけ良い燃費がでました。

ですので、BSFCが237.76g/kW•hもとても燃費の良い数値ということになります。

 

しかし、これは1回だけのデータです。

速度を57kmに保つ為にはアクセルをもう少し踏み込む時もあります。

こちらでアクセルの踏み込み量とその時の速度の瞬間燃費がわかるグラフを見ることができます。

 

次は色々な運転パターンのBSFCを調べてみます。

 

 

システム走行性能図と変速比

大量のデータを集めて計算するとより現実的な燃費が出せますが、とりあえず今回は時速70kmと時速80kmのそれぞれ1回の記録でBSFCと燃費の計算をしてみます。

57km/h72km/h81km/h
1496rpm1105rpm1172rpm
負荷68%負荷88%負荷87%
アクセル5%アクセル9%アクセル8%
燃料0.15ml燃料0.212ml燃料0.205ml
BSFC 237.6g/kWhBSFC 310g/kWhBSFC 292g/kWh
21.2km/L25.6km/L28.1km/L

BSFCは時速60kmが一番良い結果でした。

という事は60kmでは少ない出力でエンジンが軽く回るので変速比が高く、ギヤは軽いと推測でき、スピードは出せません。

ですので燃費は悪くなります。

 

時速81kmが一番燃費が良かったのですが、BSFCはそれほどよくありません。

変速比が低くなっている為ギヤが重く、燃料の仕事効率は落ちていますがスピードは出せます。

スピードが出れば進む距離も増えるので燃費(km/L)が良くなります。

 

この事からBSFCが良いポイントではギヤが軽く燃料に仕事をさせて、BSFCが悪いポイントではギヤを重くして燃料の仕事を減らすような設定にして快適に燃費が良くなるようにしています。

 

 

下のグラフはシステム性能曲線ですが、駆動力が下がっても時速60kmまでは出力は増加しています。

アクアは燃費と加速性能を良くする為に60km/h付近でBSFCや変速比を大きく変えるように設定されているのかもしれません。

アクア (NHP10) システム性能図:駆動力と出力