ルームランプ何時間つけっぱなしでバッテリー上がり?充電でどれだけ回復するのか

*当サイトはプロモーションが含まれます


このエントリーをはてなブックマークに追加 ブックマークに追加

室内灯の消し忘れ」や「エンジンをかけずにアクセサリーの状態で放置」などの原因でバッテリーを上げてしまう時もあります。

バッテリー上がりをしてしまった場合、充電して再利用しますが、その後バッテリーの寿命が短くなるといった噂も聞きます。

 

ここではルームランプ(室内灯)の消し忘れを想定してバッテリーを放電させてその後、充電をして寿命の判定基準に使われる「比重」「CCA」「内部抵抗」の変化を調べて見ました。

 

1度バッテリー上がりをしてしまった車を充電して「あとどれくらいバッテリーを使用できるか」を実験しましたので愛車のバッテリー寿命の目安にして下さい。

 

 

寿命変化の実験に使用したバッテリー

軽自動車で最も多く利用されているM-42バッテリーを使って実験します。

4年間通常使用したバッテリーを使ってデータを集めました。

 

バッテリーの使用過程

  • 年間1万kmの計4万km
  • 4年2か月経過
  • 通勤使用 毎日15km走行
  • 1人もしくは2人で乗車
  • 高速走行は年5回ほど
  • 夜間の使用は少ない

 

 

バッテリーの比重【実験前データ】

新品の比重は1.26~1.28です。

下記表はで先ほどご紹介した今回実験に使用する約4年使用したバッテリーの比重です。

 

比重(容量70%)
+側セル1セル2セル3セル4セル5-側セル6
1.211.251.251.251.251.23

※この比重を容量に例えると70%程度

一般的にバッテリーは4年が寿命と言われていますが、このバッテリーの容量は半分以上の70%あるので、まだ乗れます。

容量50%以下で車のライトやエアコンを大量に使用すると充電が間に合わずバッテリー上りをおこしやすいので、50%以下が寿命

一番左端の番号1のセルと右端の番号6のセルの比重が少しだけ低い状態でした。

1番最初に充電や放電の電子が流れるので化学反応が他のセルよりも多く、比重が変化しやすいです。

 

比重は一番高いセルと一番低いセルで0.4以上の差があると充電しても回復するのが困難と言われています。

今回はセル1とセル2の比重の差が0.4でしたので限度値範囲内ですが、そもそも比重とはなにかを説明いたします。

 

 

バッテリー比重とは

バッテリーの比重とは電解液の希硫酸と水の質量比です。

バッテリーの比重1.21とは希硫酸が水の1.21倍ということです。

 

電解液中の比重が低ければ希硫酸が減っていて、比重が高ければ電解液中の希硫酸が多い事を示しています。

バッテリーの電解液の中は希硫酸の分子が電離し、水素イオンと硫酸イオンになっています。

 

電極の材質はマイナスが鉛でプラスが酸化鉛です。

電子(電流)を流すとマイナス電極が鉛イオンになり硫酸イオンと反応して硫酸鉛の分子になります。

 

Pb+SO42-→PbSO4+2e-

プラス電極は電子を受けて酸化鉛が還元されて水と硫酸鉛が発生します。

 

そうなりますと電解液中の希硫酸が減り、水も増えるので希硫酸の濃度が低くなり、比重が低くなります。

電子を流せば流すほど、この化学反応が起きるので電解液が薄くなります。

 

これでバッテリーを使用すると比重が低くなるのがわかったと思いますが、バッテリーは比重以外にも重要な指標が3つあります。

それぞれを解説します。

 

 

電圧、CAA、内部抵抗【実験前データ】

バッテリーテスト結果
電圧CCA内部抵抗
12.82V283A8.65mΩ

新品のバッテリーを測定すると電圧12.81V、398CCA、内部抵抗6.16mΩでした。

 

今回実験に使用するバッテリーは数値的にはまだ十分使用できるものです。

ガソリンスタンドなどにあるバッテリーチェッカーでも不良ではなく、注意と判断される数値です。

(バッテリーチェッカーは正常、注意、不良の3段階表示)

M-42バッテリー正常基準: CCA285以上、抵抗8.60mΩ以下

 

それぞれのチェック項目の内容を説明します。

 

 

電圧とはエンジンをかけるパワー

電圧は電流(電子)を流す力です。

電圧はVで表します。

 

12.5V以上が正常です。

化学反応を繰り返して極板が溶けて変形したり、分極がおきて抵抗が大きくなっていたり、電解液中の反応できるイオンが減ると電圧が下がります。

 

電圧が下がれば電流を流せなくなるので車のエンジンをかける事ができません。

気温など環境によって変わりますが12.0V以下では自動車のエンジンをかける事は難しいと思います。

エンジンがかからない色々な原因を紹介しているページも参考に見て下さい。

 

 

CCAとはバッテリー容量と同じ

CCAは「コールドクランキングアンペア」の略です。

 

CCAは-18℃の環境でバッテリーを放電させて30秒後のバッテリー電圧が7.2V以上を保つことができる、限界の放電電流値です。

新品で398Aということになります。

 

車で一番電流を使うのはエンジンを始動するセルモーターを回す時です。

 

通常セルモーターを回すには150Aほど電流が必要ですが、新品のバッテリーは398CCAでしたので、エンジンをかける電流の倍以上の電流を-18℃の状態でかけても7.2Vを保てるバッテリー容量ということになります。

ちなみに新品のバッテリーを20℃の環境でセルモーターを回す時のバッテリー電圧は瞬間で10.0V前後になります。

 

エンジンをかけるには最低でも瞬間9.0V以上は必要です。

正常のバッテリーですと、エンジン始動時は10V前後になります。

 

 

内部抵抗とはパワーの持続に関係

内部抵抗は電圧や電流を下げる原因になっているバッテリー内の抵抗です。

上の図はGSユアサのページを引用しましたが、バッテリー内部は電解液の他にこのような活物質の正極板や負極板、セパレーター、ガラスマット、ストラップなどが入っています。

バッテリーは使用劣化によって「活物質の剥がれ」や「サルフェーション」が発生します。

 

電解液の電子は活物質の負極板に吸収されて流れていきますが、活物質の剥がれは電子を吸収する面積が減るので内部抵抗の増大になります。

サルフェーションは電解液中の硫酸が負極板に硫酸鉛として付着し、電子を吸収できる面積を減らすので、こちらも内部抵抗の増大になります。

このように内部抵抗が大きいと電子(電流)を流す量が少なくなるのでバッテリーの性能の低下になります。

 

今回はバッテリーがどれだけ消耗しているかの性能を判断する為にバッテリーを放電と充電のテストをして比重、CCA、内部抵抗の変化を記録します。

 

 

ルームランプを一晩つけっぱなし実験

  • 放電終始電圧とは: バッテリーが安全に放電できる最低値
  • ルームランプ電流: 1.4a

ルームランプの電流は一般的に0.6a~1.0a程度ですが、今回は少し多めにしたので、実際は半ドアに近い状態です。

軽自動車の半ドアは1.2a前後です。

 

10.5V付近が放電終始電圧なので、1.4aの電流を流して10.5V付近まで電圧が下がる時間を計ります。

 

 

ルームランプが原因でバッテリー上りする時間

13時間で放電終始電圧の10.5V以下になりました。

夕方帰宅して次の日の朝にどういった状態か分かりやすくよくありがちなルームランプの消し忘れを例にして実験します。

 

18時に帰宅してルームランプを点灯し、翌朝7時にバッテリーを点検したと仮定します。

 

バッテリーテスト結果
電圧CCA内部抵抗
10.75V33CCA73.41mΩ
比重(容量25%)
+側セル1セル2セル3セル4セル5-側セル6
1.111.131.131.131.131.12

この数値はバッテリー上りですが、10時間経過したあたりから放電終始電圧に近づいてきたので電圧低下が早くなりました。

ルームランプ消し忘れも8時間程度で気が付けばバッテリー上りを防ぐことも可能です。

 

ではこの状態のバッテリーはどの程度回復できるのでしょうか?

 

 

 

バッテリー充電による回復データ

このバッテリーの充電は3aが基本ですが、少ない電流で長時間充電した方が最大限まで回復するので0.8aでゆっくり充電します。

充電時間電圧CCA内部抵抗
1h12.2513618.04
2h12.3717414.05
3h12.4019612.51
4h12.3721511.37
5h12.5421811.21
6h12.5822310.96
7h12.5923010.66
8h12.6124010.20
9h12.6524110.15
10h12.722539.68
11h12.893058.03
12h12.813167.74

充電初期は内部抵抗が大幅に下がりました。

これはマイナス電極に電子を流すことで電極に付着した硫酸鉛を硫酸イオン、鉛イオン、水素イオンに分解して、電極に鉛を戻し、電解液に希硫酸を戻し、水素を発生させます。

簡単に省略して説明:電極に薄く張り付いた硫酸鉛を充電によって剥がす事ができるので抵抗が減る!

 

下は充電完了後の比重を測定したものです。

比重(容量50%)
+側セル1セル2セル3セル4セル5-側セル6
1.141.191.201.191.201.17

硫酸鉛を溶かしたので電解液の希硫酸が増えた事が比重を見るとわかります。

 

下で充電時間と内部抵抗の回復具合をグラフにしました。

 

 

内部抵抗とCCAは回復

充電中のCCAと内部抵抗の変化を分かりやすくグラフにしました。

充電が進むに従って内部抵抗は下がり、CCAは増えていくのが分かります。

 

CCAは316Aの正常値まで回復しました。

内部抵抗も7.74mΩまで下がり正常値になりました。

 

しかし、比重はそれほど回復できていません。

特に両サイドのプラス端子側とマイナス端子側は比重がとても低いです。

 

内部抵抗はサルフェーションに関係するので、内部抵抗と比重はとても関係が深いはずです。

内部抵抗が下がったのに、比重が回復しないのはどうしてでしょうか?

 

 

比重が低くなる理由

「比重が低い」=「希硫酸濃度が薄い」です。

希硫酸が薄くなるのはバッテリーが電子を流すと電解液と電極が化学反応をおこして水と硫酸鉛を作るからです。

 

  1. 水が増えれば希硫酸の濃度が薄くなります。
  2. 硫酸鉛が増えれば電解液中の希硫酸が減ります。

硫酸鉛は電解液中の硫酸を吸収したものです。

硫酸鉛はマイナスとプラスの両極板に付着するので電解液中の希硫酸は減ります。

そうなると電解液の比重は下がります。

 

充電すると比重が上がる理由

充電すると逆の現象が起きます。

放電はバッテリーのマイナス極板から電子を放出しますが、充電は逆でバッテリーのマイナス電極板に電子を流します。

 

マイナス極板に張り付いた硫酸鉛が電子を受けて鉛イオンと硫酸イオンになります。

鉛イオンはそのままマイナス電極に張り付いて鉛に戻ります。

 

硫酸イオンは電解液の水と反応して希硫酸に戻ります。

見た目では硫酸鉛が溶け出し、電解液中に希硫酸が増えるはずですが、今回、充電しても希硫酸はそれほど増えませんでした。

 

 

結晶性硫酸鉛(サルフェーション)が比重を上げない

希硫酸(比重)が増えない理由の1つに結晶性サルフェーションが発生した事が考えられます。

結晶性サルフェーションは硫酸鉛が固まったものです。

 

放電して硫酸鉛が電極に張り付いた状態が長ければ長いほど強く結晶化されます。

結晶性サルフェーションは充電しても溶けません。

下↓の画像は正常

バッテリー 膨張

下↓が結晶性サルフェーションが発生したバッテリーの側面です。

膨らんでいるのがわかると思いますが、こうなるとバッテリーは寿命です。

バッテリー 膨張

 

サルフェーション(硫酸鉛)は電流を通しません。

電極板に硫酸鉛が付くと、電極板の電子を受ける面積が減ります。

 

 電極板の面積減る=抵抗が増える=電流が減る

 

このようにサルフェーションが増えると内部抵抗が増えますが、今回は充電よって内部抵抗はかなり減りました。

 

しかし、このバッテリーは比重は上がらず、内部抵抗だけが下がった状態です。

そうなりますとサルフェーションが発生したが電極板の面積が減っていないということになります。

 

こういった場合、硫酸鉛が電極板の底に沈殿するよう付着している可能性があります。

この状態でしたら内部抵抗が低いのでエンジンをかける時に必要な大電流には影響出ませんが、電解液の希硫酸が少ないので化学反応が鈍くなり鉛イオンを多く作れません。

 

 容量が少なくなったバッテリーという事

自動車の使用中にエアコンをマックスで長時間使っていたり、シートヒーターやヘッドライトなど電装品を多く使っているとイオンが足りず、バッテリーが上がりやすくなります。

 

 

エンジンをかけたまま充電する効果は?

バッテリー上りをした場合、JAFやレッカー業者はジャンピングでエンジンをかけてくれます。

そういった対処法では、エンジンを切らずに近くの整備工場、ガソリンスタンド、オートバックスなど用品店に行ってバッテリーを交換するように言われます。

 

バッテリーは上がっていてもエンジンをかけると車のオルタネーターによって発電されるのでエンジンは止まることはありません。

上図はオルタネーター回路図ですが、オルタネーターはバッテリーを充電するだけでなく、電装品を動かす回路にも電流を流します。

オルタネーターはエンジンや電装品を動かしますが、あまった電気をそのままバッテリー充電に使うので、ライトやエアコンなど電気をあまり使わずにエンジンをかけ続けていればバッテリーは充電されていきます。

 

その充電電流は10A~50A程度なので、かなり高い充電(急速充電レベル)になり、充電器で充電するより早くバッテリーが回復しますが熱を持ちます。

バッテリーが熱くなると活物質が劣化しやすく、蒸発や水素も多く発生するのでバッテリー液が減るのでバッテリーの寿命は早まります。

 

充電はなるべく充電器を使って弱く長時間充電しましょう。

0.8aで48時間ほど充電するのが一番いいと思います。

 

 

 

ルームランプつけっぱなしによるバッテリー寿命変化

実験結果

最初の状態は容量70%

ルームランプ消し忘れで容量25%まで減少

満充電で容量50%まで回復

 

CAAと内部抵抗は回復したので車が正常でしたらエンジンの始動は全く問題ありません。

しかし、エンジンをかけるモーター(セルモーター)が弱っている場合や、燃料系統や点火系統が弱っている時はクランキング時間が長くなります。

 

そうなると比重(容量)も重要になります。

容量が低いとエンジン始動時の勢いが長く続かないので調子の悪い車ですと、エンジンがかからない場合もあります。

 

エンジンがスムーズにかかれば車のオルタネーターによってすぐに満充電されるので問題ありませんが、その充電も容量が減っているので満充電量も少なく、通常の電気利用でも限界の電圧に下がりやすいです。

今回は70%から50%に下がったので、通常使用で後2年利用できたバッテリーが約1年5か月になってしまいました。

結果:1日ルームランプの消し忘れで充電してもバッテリーの寿命が半年以上短くなった

 

 

バッテリーの使い方は2通り

  1. 内部抵抗はエンジン始動(セルモーター作動)に関係。
  2. 比重は長時間電気を使うライト、ヒーター、コンプレッサーなどに関係。

 

ガソリンスタンドのバッテリーチェッカーは主にエンジン始動時の出力(パワー)チェックになります。

チェッカーで正常でも比重(容量)と合わせて確認しなければ、エンジンは容易にかかるが、少し電気を多く使用する乗り方をするとエンジンを切った後かからなくなるといったバッテリー寿命に気が付きません。

 

電気を多く使う乗り方はエアコン風量最大で、尚且つアイドリングだけといった時です。

車にはオルタネーターといった発電機がありますが、エンジン回転で出力しているのでアイドリングのようにエンジン回転が低い状態ではそれほど充電されません。

 

その状態でエアコンをMAXで使っていればバッテリーの消費は大きいです。

夏場、駐車場でエアコンをかけて涼んでいる方はバッテリーの充電量より放電量の方が多いので要注意です。

 

このような乗り方をされている場合はバッテリー容量が大事なのでバッテリーチェッカーだけではなく比重で容量のチェックも必ず行いましょう。

 

バッテリー劣化といってもどの数値に異常があるかで内容に大きな差が発生するので注意して下さい。