メーターにDPFのマークとエンジン警告灯が点灯したハイエース。
下図は整備マニュアルから抜粋したものだがこのDPFマークとエンジン警告灯が同時に点灯した原因を調べる。
DPFもDPRも呼び方は違うが内容は同じ。
←こちらがエンジン警告灯。今回はこれも同時に点灯している。
車はハイエース KDH20系 エンジンは1KDタイプ。
整備マニュアルを見るのが面倒な整備士の方やDPF警告灯やエンジン警告灯の点灯理由と修理費用を知りたい方は是非見て欲しい。
なお、車検を安くした方は「車検どこがいい?人気ランキング」で選ぶと安心して良い車検になるので参考にしてほしい。
目次
ハイエースのDPFの点灯原因を調べる
DPF(DPR)はマフラーの途中に付いている触媒。下記画像が現物。センサーを多数使ってコンピュータで監視している。
触媒は排気ガスを浄化する装置。
今回は排気ガスを浄化する装置に不具合が発生したためにDPF警告灯が点灯したと考える。
DPR触媒にPMが堆積すると自動的にPM強制再生制御が実施され堆積と再生を繰り返すが、「エンジンをかけてすぐ切る」を繰り返したり、「アイドリングで長く停車している」といった乗り方が多いとPMが増えすぎてしまう。
PMとは排出ガスに含まれるCOやHCの微粒子。
PMの強制再生は触媒を高温にして除去するが、高速運転などで回転数を上げて燃料を濃くしなければ高温にはならず、どんどん堆積してしまう。
上の図はハイエースの整備マニュアルの1部だが、触媒の温度を上昇させるとPMは消えてなくなる。
このハイエースの乗り方を聞くと街乗りが多かった為、PMの強制再生ができていないのでDPF警告灯が点灯したものと考えられる。
エンジン警告灯も点灯しているので診断機を使って詳しく正確な原因を調べて見る。
ハイエースのエンジン警告灯の原因
エンジン警告灯が点灯している場合、OBDⅡのコンピュータ診断機で故障コードが確認できる。
エンジンを診断してみると
- P1608 :エンジン出力不足
- P1609 :空燃比濃い
- P200C :高排気温度
- P244B :DPF差圧大
- P2463 :PM過堆積
走行中、PM強制再生が必要な表示(ランプ点滅)が出てからも走行を継続してPM堆積量が限界を超えた場合 |
触媒差圧が0.27以上 |
DPR触媒温度が1000°Cを越える |
クウネンヒセンサ(A/Fセンサ)の出力値が閾値以上 |
吸排気系、燃料系、冷却系の故障・異常によってエンジン出力の低下が発生した場合 |
以上が今回の全部の故障コードだが、これを見る限りではPMが堆積してDPFが詰まり差圧が大きくなり、PMを除去する為に燃料を濃くし、触媒が高温になりすぎている。
さらに堆積が多い為、排気ガスが詰まりエンジン出力低下にもつながっていると思われる。
DPFの差圧大とは?下図の整備マニュアル参考
上図中央にDPR排気差圧センサーがある。このセンサーが触媒と触媒後の圧力を比較してどれだけPMが堆積しているか計算している。
とりあえず直す前に現状のエンジンセンサーからの数値を以下に保存しておく。
故障コードが複数あるので故障コードを消去し、もう一度試運転して故障コードの絞込みをする。
エンジン警告灯を消去して再度故障コードを見る
故障コードを消去するとP2463のPM過堆積だけ残った。
これで原因が判明。
後はPMを強制再生すればいいのだが、再生できないほど堆積してしまうとDPF触媒を交換しなければならない。
車には故障発生時にセンサーのデータを保存する便利な機能がある。
その保存するフリーズフレームデータを見て、どれだけPMが堆積しているかみる。
PM過堆積P2463と高排気温P200Cが発生していた
この2つのコードがフリーズフレームデータとして記録されていた。
以下の表はエンジン警告灯点灯した瞬間のDPF関連の数値。
DPR/DPNR差圧 | 22.585 kPa |
触媒差圧 | 0.2797 |
DPR差圧異常/過堆積 | 異常 |
DPR高排気温 | 異常 |
PM堆積量割合 | 76 % |
PM堆積量割合が76%と、かなり高く、詰まる寸前。排気温度も異常となっている。
触媒差圧が0.27以上だと出口が塞がっている可能性が高いが、「0.279」とても微妙なライン。
触媒が塞がっているのを解消するには「触媒を交換」か「強制再生」の2つ。
まずは強制再生してみる。
DPF強制再生を実施して警告灯を消してみる
このハイエースには強制再生スイッチがない為、診断機で実施する。
スイッチがある車なら自分でも可能だが、なければ整備工場にお願いするしか手段はない。
PMの強制再生時間は15分~40分。
※堆積量によって再生時間が変わる。
その間は回転数と燃料噴射が上昇する為、エンジン及びマフラーが高温になりやすいので安全な場所で行う事。
また、アクセル操作を行っても強制再生が終了してしまうので、長時間動かさなくていい場所で行う。
以下の表はDPF強制再生した後のDPF関連の数値。
再生前→再生後 | |
DPR/DPNR差圧 | 22.585 kPa→1.050 kPa |
触媒差圧 | 0.2797→0.1187 |
DPR差圧異常/過堆積 | 異常→正常 |
DPR高排気温 | 異常→正常 |
PM堆積量割合 | 76 %→2% |
PM堆積量割合が76%→2%と、大きく減少した。
DPR差圧と触媒差圧も減少したのでDPF触媒を交換しなくても済んだ。他の数値は下記ページを参考にしてほしい。
強制再生するとエンジンオイルも高温になり、燃料もエンジンオイルに混ざるので強制再生後はエンジンオイルの交換も必要になる。
車検の時に診断機を繋いでPM堆積量割合を調べてもらって必要に応じて、強制再生してもらうか下で紹介する予防洗浄をしてもらうのもいい。
DPFの手動再生が終わらない時
DPFの強制再生を手動スイッチで始めて60分経過しても終わらない時でも、再生制御は自動で終了する。
その場合、触媒の中のPM(スス)が多すぎて浄化しきれていない。
DPFの警告灯は残るがエンジン警告灯が消えていればバッテリーのマイナス端子を60秒ほど外すとコンピューターがリセットされ消える事がある。
コンピューター診断機でPM強制再生を行った時は必ず診断機でリセットして、なおかつバッテリーも外して完全にリセットする必要がある。
強制再生を行ったあとはエンジン警告灯やDPF警告灯が点灯していても必ずリセットする事。
そうすることで警告灯が消えれば後は自身で高速走行をして触媒を綺麗に保つようにすれば少しずつ改善していくかもしれない。
出来ればDPF洗浄剤などを燃料タンクに注入する事をおすすめする。
PM堆積がひどい時は触媒を直接洗浄する洗浄剤もワコーズで販売されているので試すのもいい。
エキゾーストフューエルアディションインジェクタの詰まり
こういった状態になるには燃料系統も詰まりかけている可能性が高い。
エキゾーストフューエルアディションインジェクタは触媒の前に燃料を噴射する装置。
参照:整備マニュアル
上の図のようにPM再生時はエキゾーストマニホールドのすぐ後ろで燃料を噴射している。
触媒を高温にするためだが、こちらもPMによって詰まると強制再生もできなくなる。
EGRによって排気ガスをエンジンに再循環させるのでコモンレールやインマニもPMが堆積しやすくなるのでなるべく早めに強制再生させるように定期的に高速道路の走行をおすすめする。
強制再生が出来なければDPF触媒、インジェクタなど多くの部品を交換しなければならなくなる。
それこそワコーズのDL-1やPM浄化剤を使って洗浄、予防をおすすめする。
DPFとエンジン警告灯の原因と修理費用
平成24年式 型式KDH20 走行180000KM | |
メーカー 車種 | トヨタ ハイエース |
症状 | DPF警告灯 エンジン警告灯 |
音 | アクセルを踏むとこもったような音 |
臭い | 特になし |
振動 | 特になし |
原因 | DPF触媒にPM堆積 |
作業内容 | DPF強制再生 |
作業難易度 | [star rating = "2"]簡単 DPF再生スイッチがあれば誰でもできる。スイッチがないと整備工場に頼むが1時間で完了。その後、エンジンオイル交換も必要になる。 |
修理代 | DPF強制再生とエンジンオイル交換10,000円。DPF触媒とインジェクタ交換になると30万円以上。 |
後の支障 | DPF触媒、インジェクタ、コモンレール、EGRなどがPMの詰まりで動かなくなる。 |
参考 |
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