エアコンの効きが悪いどころではなく、まったく効かないNBOX。
エアコンの仕組みは単純だが、ガスが入ってないとマグネットクラッチが入らない、など、電気的な故障診断の落とし穴が多数ある。
- エアコンが効かない原因がどこにあるのか?
- 故障箇所によって変わるエアコンの修理費用
をここでご紹介するが、わかりやすく説明するため、実際の画像と整備マニュアルの資料も混ぜて説明する。
NBOX JF1 80000km
乗られている方はページ後半の修理費用を参考にしてほしい。また、整備士の方は修理の時短と誤診防止に役立ててほしい。
なお、NBOXはパワーウインドウの故障も多発している。NBOXのパワーウィンドウが動かないページもみてほしい。
まずは基本のエアコンガス量を点検する。
目次
最重要なエアコン制御はプレッシャスイッチ
NBOXのエアコンガスは高圧パイプについているプレッシャースイッチ(圧力センサ)でコンプレッサーの作動を制御している。
圧力が上がりすぎるとエアコンのガスが通っているサイクルの保護をするためにコンプレッサのマグネットクラッチの電源をカットする。
正確にはコンプレッサリレーの電源を切る。更に正確に言うとエンジンコンピューターによってコンプレッサリレーのマイナス回路を切る。
マグネットクラッチが作動しなければエアコンは効かない。
詳しくはエアコンが冷える仕組みページを見てほしい。
圧力が上がりすぎる原因はガス量過多か高温。
通常ガスは増えないので、いきなりガス量過多でエアコンが効かなくなることはない。
圧力が高い原因のほとんどは高温によるもの。
圧力が高い時は電動ファンをチェック
ガスの圧力はコンデンサを冷やすことで抑える。
コンデンサはエンジンより前について、走行中は自然風で冷やす。停車中は電動ファンを回してコンデンサに風を当てて冷やす。
このNBOXは電動ファンは作動していた。
次はガス不足の場合。
圧力が低い時はガス漏れをチェック
ガスが少ないと圧力が低くなる。
圧力が低くてもサイクルを保護するためにマグネットクラッチを切る。
ガスが少ないとコンプレッサの内部が空転して傷がついてしまう。
傷がつくと、圧縮漏れや引っかかりでき、コンプレッサは正常作動しない。
ここまで聞くとエアコンガス量の点検はとても重要だとわかる。
エアコンガスの量を点検
ガスの種類 | R134a |
ガス量 | 350+-25g |
※一般的に売られている物はガス1缶300g程度
エアコンガスの量は完全に抜いて入れなおさなければ正確な量はわからない。
現状でガス量を確認するにはゲージを使って低圧、高圧の圧力を見て判断する。
コンプレッサのマグネットクラッチをONにするには低圧は約0.2MPa以上は必要。下の表はACプレッシャースイッチの基準値。
圧力センサ作動OFF条件高圧ゲージ | 2.5MPa以上 |
低圧ゲージ | 0.19MPa以下 |
圧力センサは上記基準を超えるとOFFになり、エンジンコンピュータ内のマグネットクラッチリレーのコイル側をアースしない。
アースしないとマグネットクラッチリレーはONにならないのでマグネットクラッチには電圧がかからず作動しない。
エアコン圧力が基準値内でもマグネットクラッチが入らなければ、マグネットクラッチの故障と考えるのが一般的だが、NBOXの場合は最初にコンプレッサリレーを点検する。
実はNBOXのコンプレッサリレーは故障しやすい。
NBOXは最初にリレーを点検する
エンジンルームの右側にヒューズボックスがあるが、その中の中央付近にエアコンコンプレッサーリレーがある。
ホンダ車はリレーの故障でエアコンが効かないといったケースがとても多い。
※フリードのエアコンが効かない原因ページでリレーについて解説しているので参考にしてほしい。
同じヒューズボックス内にクラクションのリレーがあるので、コンプレッサリレーと付け替えて「マグネットクラッチが入るか?」と「エアコンは冷たい風が出るか?」を確かめてみるのが、簡単。
この作業でエアコンが効くようになるNBOXはとても多いが、今回は効かなかった。
次はマグネットクラッチを点検する。
マグネットクラッチの点検
マグネットクラッチとはコンプレッサーのプーリー部分についており、エンジンとベルトで繋がっている。
エアコンスイッチをOFFにしている時はコンプレッサを回転させないように空転させるのが、マグネットクラッチ。
エアコンスイッチをONにした時だけマグネットクラッチが繋がり、エンジンベルトの動力でコンプレッサを回転させる。
右下の黒いカプラーがコンプレッサのマグネットクラッチの配線につながる。ここの電圧を測る。
エアコンスイッチをONにしてマグネットクラッチの電圧を測ると12Vきていた。
ということはマグネットクラッチの故障だろうか。
マグネットクラッチの故障だけではない
マグネットクラッチに12V電圧がかかっているのにクラッチが入らないのはマグネットクラッチが故障しているしか考えられない。
しかし、今回マグネットクラッチが故障したのは、他に原因があった。
マグネットクラッチを交換しようと思っている方は注意してほしい。
このNBOXはコンプレッサの中の不具合が原因でロックしてしまい、クラッチに強く負担がかかってマグネットクラッチも故障してしまっていた。
今回はエアコンコンプレッサの故障だった
エアコンコンプレッサの点検の基本はマグネットクラッチが「手で簡単にスムーズに回るかどうか」の確認から始まる。
左がロックしているコンプレッサ、右が正常のコンプレッサ。
左はクラッチが焼けてしまっている。
通常、マグネットクラッチは12Vの電圧をかけなければフリーになっているので、簡単に手で回るはずだが、このNBOXは回らない。完全にロックしていた。
分解してみるとプレートを止めているピンが1つ折れてしまい、回転軸がずれて所々傷がついていた。
この傷が回転のストッパーとなってロックしたと考えられる。削れた粉も多くみられた。
このNBOXのエアコンが効かない原因はコンプレッサの故障だった。
粉があまりにも多い場合はコンプレッサを交換しても、すぐに中を傷つけてしまうため、粉が含まれているコンデンサ、リキッドタンク、エバポレータも同時交換になる。
軽い場合は清掃する。
NBOXのエアコンの修理費用一覧
NBOXの「エアコンが効かない」や「効きが弱い」など、よくあるエアコンの不具合の修理費用をまとめた。
以下の金額は細かいパッキンなどもおおまかに含めて計算してあるが、どこの整備工場に出しても、だいたい近い金額になるように調整した。
コンプレッサのロック故障&交換費用
症状- 効きが弱いORまったく冷えない
- ガラガラ異音
コンプレッサ(再生品) | 35000円 |
ACガス | 3000円 |
工賃 | 15000円 |
合計 | 53000円 |
マグネットクラッチの断線と滑り&交換費用
症状- まったく冷えない
- ガラガラ異音
マグネットクラッチセット | 10000円 |
ACガス | 3000円 |
工賃 | 15000円 |
合計 | 28000円 |
コンプレッサリレーの接点不良&交換費用
症状- まったく冷えない
コンプレッサリレー | 1200円 |
工賃 | 300円 |
合計 | 1500円 |
電動ファンの焼き付き&交換費用
症状- 走ると冷える
電動ファン | 15000円 |
工賃 | 15000円 |
合計 | 30000円 |
コンデンサのガス漏れ&交換費用
症状- 効きが弱い
コンデンサ | 20000円 |
ACガス | 3000円 |
工賃 | 15000円 |
合計 | 38000円 |
よくある故障は以上だが、この中でもコンプレッサリレーとコンプレッサ本体の故障はとても多い。
エアコンフィルターも汚れると風力が減るので、効きが悪く感じる時がある。
臭いも発生するので、エアコンフィルターは少なくとも車検ごとに交換した方がよい。
なお、車検安いランキングも参考にすると安心して安い車検店が探せるので参考までに見てほしい。
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