ライトエースのオーバードライブ点滅とオートマショックの直し方

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エンジンを始動するとメーターの「O/D OFF」の黄色い警告灯が点滅していた。

オーバードライブをOFFにした時に点灯するスイッチだが、オーバードライブのスイッチをONにしてもOFFにしても点滅は変わらない。

対象車両:ライトエース or タウンエース 型式S402 9万km

車を動かそうとシフトをバックギアに入れると、激しいショックがある。

シフトをドライブに入れても大きなショックがあるので、オートマチックトランスミッションが故障したようだった。

 

エンジン警告灯の点灯はエンジンに関連するセンサとアクチュエータ系統の異常を知らせるものだが、オーバードライブ警告灯はオートマ系統の異常を知らせるランプ。

ニュートラルスタートスイッチかATコンピュータの故障のケースが多いが、間違った部品交換をしないように整備マニュアルを見ながら正確に故障診断して直していくので、ぜひ参考にしてほしい。

 

オーバードライブ点滅の警告灯を診断

診断機でオートマの故障診断をするとP0705のシフトポジション入力異常が表示された。

画面は少し見にくいが、「シフトポジション多重/無入力フェイル」と表示されている。

 

シフトポジション異常P0705の内容

オートマのコンピューターがP0705の異常を検出するのは以下2つのどちらか。

  1. シフトポジションが1秒以上無入力
  2. シフトポジションが2秒以上多重入力

これはどういう事かというと、

シフトが「P-R-N-D-2-1」とあるが、「どの位置にもない」といった信号がATコンピューターに1秒以上送られていると無入力、PとRなど「2つ以上同時にシフト位置にある」といった信号がATコンピューターに2秒以上送られていると多重入力と検知される。

 

どちらの異常か調べるためにATコンピュータのデータモニタを見てみる。

 

 

オートマのデータモニターで故障状況を確認

ライトエースの自動車コンピュータ制御データに今回の故障状況のATの状態を記録したので、見てほしい。

以下に今回の故障診断に必要なデータを抜粋した。

PレンジスイッチON
RレンジスイッチOFF
NレンジスイッチOFF
DレンジスイッチOFF
3レンジスイッチOFF
2レンジスイッチON
LレンジスイッチOFF

シフトがPの位置にあるのでPレンジスイッチがONなのは正常。

しかし、2レンジスイッチもONになっているのは異常。

データモニタを見たことで「シフトポジションが2秒以上多重入力」の方の異常であることがわかった。

上の画像はイメージだが、多重入力は両方のシフト位置に入っていることを示している。

ここまで絞られれば「なぜ2レンジもONの状態になっているのか?」を調べていくだけなので故障探求もそれほど時間はかからない。

整備マニュアルを見るとこの故障コードと関係している点検箇所は4つだった。

  1. ニュートラルスタートスイッチ
  2. ATコンピュータ
  3. コンビネーションメータ
  4. 上記2つを繋ぐ配線

この4つを点検するが、ニュートラルスタートスイッチは車の下側についているので、砂や水が付着しやすく故障が多い箇所。

最初にニュートラルスタートスイッチを点検した方が効率的。しかも見るとことが2レンジシフトに限られるので簡単。

※ニュートラルスタートスイッチはインヒビタスイッチとも言う。

 

電圧やアースも点検することで、配線も同時に点検することになるので時間短縮できる。

 

 

ニュートラルスタートスイッチを点検

車に乗られている人でニュートラルスイッチをご存知の方はだろうか?

整備士なら知っていると思うが、他の人で知ってる人はほとんどいないと思う。

 

ニュートラルスタートスイッチとは

オートマチックトランスミッションの横にニュートラルスタートスイッチがつき、シフトコントロールワイヤ、シフトコントロールレバーと連動して動く。下の図は整備マニュアルから抜粋したのも。

下の画像は車から外したもの。

役割

シフトレバーの位置をATコンピュータに送る

これだけだが、PもしくはNレンジでなければセルモーターが回らないように設定されているため、エンジンを始動するにはとても重要。

このようにエンジンをかけるにはニュートラルスタートスイッチをPかNにしてATコンピューターに信号を送る必要がある。

 

ニュートラルスタートスイッチの電圧を点検

ニュートラルスタートスイッチのカプラーを外し、車両側カプラーの電圧を測定して基準値と比較する。

7番電源線にテスターの+と6番のアース線にテスターの-を繋ぎ、キーをONにすると約12Vあったので、バックの電源線とアース線は正常。

次にカプラーの1.2.3.4.5.8の電圧を測定する。

Pレンジの時に測定したが、4番は0.02V、その他は約11.39Vだった。この数値は正常。

下はシフトポジションを検出する回路図だが、コンビネーションメータが12V電源になっているのでニュートラルスタートスイッチとトランスミッションコンピュータの両方に12Vがかかっている。

PレンジがONになるとアースに落ちるため、4番の電圧は0Vになるのが基準値で正常。その他の「1.5.3.2.8」端子はニュートラルスイッチがOFFなので12Vがかかるのが基準値で正常。

以上のことからATコンピューターは0Vになった配線のレンジが「現在のシフト位置」として認識しているのがわかる。

この車も基準値通りだったのでコンビネーションメータとコンビネーションメータからニュートラルスタートスイッチまでの配線は正常だと判断できる。

※上の図ではニュートラルスタートスイッチがONになっていない配線は全部12Vがきているのだが、わかりやすく説明するためにPの4番だけ赤色にして解説した。

 

ニュートラルスタートスイッチの抵抗を測定

正常な電圧がかかっているので、ニュートラルスタートスイッチの作動持、非作動持の内部抵抗に問題なければ、ニュートラルスタートスイッチも正常だと判断できる。

先ほどの回路図にあるニュートラルスタートスイッチの「4-6」「1-6」「5-6」「3-6」「2-6」「8-6」の抵抗を各レンジに移動させた時と別のレンジに移動させた時の2パターンで測定する。

下のカプラーの配置図で配線の位置を確認する。

2番が異常という事がわかっているが、他の端子の電圧や抵抗値がわからないと、何が異常かわからないので、比較するためにDレンジの3番も測定して2レンジと比較したほうが良い。

抵抗値測定端子 3-6(Dレンジ)

基準値
Dポジション1Ω未満
Dポジション以外10KΩ以上
実測値
Dポジション0.6Ω
Dポジション以外∞Ω

 

抵抗値測定端子 2-6(2レンジ)

基準値
2ポジション1Ω未満
2ポジション以外10kΩ以上

 

実測値
2ポジション73.4Ω
2ポジション以外∞Ω

Dポジションは基準値内だが、2ポジションの抵抗が基準値以上になっていた。

という事はニュートラルスタートスイッチを交換すれば直るのだろうか?

実際は交換しても直らなかった。次項以降でもう少し詳しく解説するので、故障診断されている方は、参考に見てほしい。

 

 

ニュートラルスタートスイッチの抵抗大はシフト無入力?

今回の故障はシフトの多重入力異常。

具体的には「シフトレバーがパーキングレンジなのにセカンドポジションにもなっている」といった故障。

なので、Pレンジの時、Pの配線が0Vで、2の配線も0Vになっている、ということ。

上の図の2と6のスイッチが入った時の抵抗が1Ω未満でなければならないのが73Ω。

この結果はどちらかというと断線よりの結果なので2レンジに入れてた時に無入力の故障コードになるはず。

しかし、この車のデータモニタを見るとキーONにしたと同時にPと2レンジに入ってると表示されるので多重入力で間違いない。

では、キーONした時にATコンピュータの2番の配線が0Vになっているかみる。

 

ATコンピュータの2レンジの電圧を点検

ニュートラルスタートスイッチの2番には12Vきていたので、コンビネーションメータとATコンピュータ間の断線している可能性が高い。

断線していればATコンピュータの2番には0Vがかかる。

ATコンピュータはアクセルペダルの上についてるが、ステアリングシャフトや色々な配線があるため、テスターを繋ぐスペースがない。

ステーボルトを2本外して、コンピュータを横にずらし配線カプラーを外すスペースを作る。

カプラーを外して2番の電圧を測ると11.90Vあった。約12Vなので正常。

ということはニュートラルスタートスイッチは2ポジションの信号は送っていないのに、ATコンピュータは「2ポジションに入っている」と判断している。

 

 

ATコンピュータを分解清掃で直った

ATコンピュータが故障しているようなので、取り外してみると、ケースが錆びていた。

内部を見ると中も錆が発生しているので、2ポジションの回路が錆びでショートしている可能性がある。

ソフトなブラシで回路上の錆を払い落とし、電子部品用の洗浄剤で綺麗にして組み付けした。

エンジンをかけるとオーバードライブの点滅が消えていた。

データモニタを見ても2ポジションはOFFになっているので直った。

シフトをバックやドライブに入れてもショックもなくなっている。

 

 

ATのシフト切り替えショックも直った理由

今回の故障はキーONにすると2ポジションがONになる現象。

2ポジションがONになるとソレノイドNo.2の電流は0mAになる。

上の図はソレノイドNo.2の電流と油圧のグラフ。電流が少なければ少ないほど出力油圧が高い。

故障時のデータモニタを見ると、Pレンジの時はソレノイドNo.2の電流は1000mA程度の数値でなければならないが、0mAだった。

参照:ライトエースのATデータモニタ

ソレノイドNo.2は電流が0になるとC2フォワードクラッチの油圧がかかり、クラッチがつながってしまう。

 

Dレンジに入れた時にライン圧がかかると、すでにクラッチがつながっているのでショックが大きいと思われる。

例えると、マニュアルミッション車を運転中に半クラッチせずにいきなりクラッチを繋いだ状態だと思ってもらえばわかりやすい。

 

ATコンピュータが直った後はPレンジ時にソレノイドNo.2の電流は1000mA程度になったので、半クラッチが効きショックが軽減した。

 

 

ATコンピュータ&ニュートラルスタートスイッチ交換費用

参考価格
ATコンピュータ50000円
ニュートラルスタートスイッチ20000円

工賃も含めて上記価格で交換できるが、コンピュータが不良の場合、故障診断に時間がかかるので、診断料は高い。

診断料金の相場
診断料金4,500円

整備マニュアルに沿って正確に診断するにはこの金額でも安い方だが、もし車の購入や車検でも顧客化してもらえるなら、この金額でも引き受けるべき。

修理だけで入庫されたら1時間程度の時間指数で診断料金をもらってもよいと思う。

現在の自動車整備は車販売のオプションサービスといった感覚ではなく、自動車整備部門が信頼出来るから、その店の車が売れるようになっている。

 

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 dutyal research motor teamより

 

 

 

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