車検では排気ガスの検査も行います。
車のエンジンでは燃料と空気を混合させて燃焼させますが、燃焼後に有害な排気ガスが発生します。
有害な排気ガスとは車の後方にあるマフラーと呼ばれるパイプからでる一酸化炭素(CO)と炭化水素(HC)です。
このCOとHCが環境汚染につながる為、基準値以下でなければ車検に通りません。
この排気ガス検査の方法や基準値、下げる裏技、合格方法をご紹介します。
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車検でチェックする排気ガス検査
車検で必ずチェックされる排気ガス検査についてご紹介します。
排気ガスの検査方法
車検の検査場ではサイドスリップ、ヘッドライトテスターに並んで排気ガス検査も必ずあります。
排気ガス検査はエンジンをかけて排気ガステスターのプローブと呼ばれる検査棒をマフラーの出口に差し込みます。
10秒ほどで排気ガスの濃度が測定されて終了です。
とても簡単な検査です。
このサイトではブレーキランプやウインカーなど車検基準のページも多数あります。
参考までに見て下さい。
排気ガスの車検基準値
CO(一酸化炭素) | 1.0% |
HC(炭化水素) | 300ppm |
排気ガス検査で上記数値以上ですと車検に通りません。
排気ガステスターがないと正確に判断できませんが、私の感覚でもお伝えしますので参考にして下さい。
アイドリング中、車の後ろに立って排気ガスの臭いがきつく感じた車はほぼ車検に通りません。
COとHCが高い状態とは?
エンジンで燃料が正常に燃焼すると二酸化炭素と水がマフラーから排出されますので、排気ガス検査ではCOとHCの数値は上がらないはずです。
数値が高い場合は以下の理由です。
CO高い | 燃料が濃い状態(リッチとも言う) |
HC高い | 燃料と空気のバランスが悪い状態(主に薄い、リーンとも言う) |
COは不完全燃焼 HCは未燃焼
H2OとCO2高い | 完全燃焼 |
CO高い | 不完全燃焼 |
HC高い | 未燃焼 |
- 完全燃焼とは水(H2O)と二酸化炭素(CO2)を排出する事
- 不完全燃焼とは燃えきれずに一酸化炭素(CO)を排出する事
- 未燃焼とは燃えなかった燃料の炭化水素(HC)を排出する事
簡単にいうとCOが高い時は燃料が濃い時、HCが高い時は燃料が薄い時と考えて下さい。
しかし、燃料が濃くても未燃焼のまま排出される場合もあるので、COとHC共に高くなることも多々あるので注意して下さい。
燃費が薄いとHCが高くなる理由 燃料があまりにも薄いと点火しても火が着かないのでエンジンが爆発しません。そうなると、燃えないガソリン(HC)がそのままマフラーに流れます。 |
燃料:空気 = 14.7:1 が理想的な空燃比となります。
燃料が濃い(リッチ)のか薄い(リーン)のか調べて適正な処置が必要になります。
空燃比が悪い = 燃費が悪い証拠です。
燃費を良くする方法のページも参考にして下さい。
車検に通る排気ガス対策
車検で排気ガス検査が落ちる場合、まずはエンジン不調を確認します。
あきらかにエンジン不調があればそこを直す事で排気ガスは正常になります。
エンジン不調でCOとHCが高い場合
主に考えられる故障は
- スパークプラグの故障
- イグニッションコイルの故障
- エアー吸気の詰まりOR吸い込み
- インジェクターの故障
- EGRバルブの誤作動
以下で詳細を説明します。
①②スパークプラグとイグニッションコイルの故障 |
スパークプラグとイグニッションコイルは点火系なので、故障するとエンジン内部で燃料が燃焼しません。 燃焼しなければ未燃焼ガスがマフラーから排出されるので、HCが高くなると考えられますが実際はクランクポジションセンサーのスピードを感知して遅い気筒は失火と判断しその気筒に燃料は噴射せず、他の気筒だけでむりやりエンジンを回そうとするため、爆発タイミングが微妙にずれ不完全燃焼(CO)だけが高くなります。 タントのエンジン不調のページもプラグ故障の症状について紹介しているので参考に見て下さい。 |
以下はクランクポジションセンサーの画像ですが、圧縮上死点に来たピストンの気筒のスピードをそれぞれ測定してタイミングのおかしい気筒を監視しています。
③エアー吸気の詰まりOR吸い込み |
エアーの詰まりは空気の量が減るので燃料が濃くなり不完全燃焼が発生してCOが高くなります。 エアーの吸い込みは、主に吸気側のパイプやホースの亀裂で発生します。 亀裂が発生していてもエンジン不調が見られない場合は完全燃焼しているのでCOは高くなりません。 空気が増えてエンジン不調が発生している場合は燃料が薄いのでHCが高くなります。 |
④インジェクターの故障 |
インジェクターはエンジン内部に燃料を噴射する装置です。 燃料が正常に噴射されなければ不完全燃焼をおこしてCOが高くなります。 |
⑤EGRバルブの誤作動 |
EGRバルブとは排気ガスをもう一度燃焼室に送り込んで燃焼させる装置です。 未燃焼ガス排出を減らして環境汚染を防ぎます。 未燃焼ガスをエンジンに送るので空燃比が変化してエンジン不調を起こすので回転数が低い状態でEGRを作動させません。 高速回転時だけ作動する仕組みです。 しかし、EGRバルブはエキゾーストマニホールドに装着されており常に高温で炭素が付着し作動不良をおこしやすいので回転数が低くてもEGRバルブが開いてしまう故障があるとCOとHCが増えてしまいます。 |
問題はエンジン不調がないのにCOやHCの排気ガス濃度が高い時です。
エンジン不調がなくCOとHCが高い原因
エンジン不調がなくCOとHCが高くなる要因は多数あるので、ここでは可能性の高い部品に絞ってご紹介します。
- O2センサーの故障
- 水温センサーの故障
- 三元触媒の故障
- バキュームホースの外れ&亀裂
やみくもに点検しても原因に辿り着かないので上記4つに絞って故障診断していきます。
その際、一番最初に車に診断機を接続してセンサー系の異常を探します。
エンジン不調がない場合は診断機でも正常と判断される場合が多いので、過去の異常検出もチェックします。
どちらも異常がない場合は診断機でO2センサーと水温センサーのリアルタイムデータをみます。
水温センサーとO2センサーのデータを組み合わせて見るとエンジンがどういった状態か判断できます。
O2センサーの故障
O2センサーはマフラーの触媒前と後ろの2つ装着されています。
O2センサーはマフラーの中の酸素濃度を測定しており、酸素が多いと1.0V近くの電圧を発生させ、逆に薄いと0Vに近い電圧を発生します。
その0Vか1Vの状態が長く続くと排気ガス中の酸素が理想の空燃比からずれていると判断してメーターにエンジン警告灯を点灯させて知らせます。
診断機のグラフを見てエンジン回転を上げれば燃料を濃くしたいので1.0Vになるはずです。
何も負荷をかけずにアイドリングで0V~1Vを付近を繰り返していればO2センサーは正常です。
O2センサーが故障して電圧がどちらかに片寄ると燃料を濃くしなくても良い時に濃くしてCOを高くし、燃料を濃くしなければいけない時に薄ければHCを高くしてしまいます。
下図は左が新品で右が8万kmほど使用したO2センサーです。
右のように煤が付着してしまうと酸素濃度が測定できないので酸素が少ないと判断して酸素量を増やす(燃料を薄くする)ようにエンジンコンピューターに信号を送って、HCが高くなってしまうこともあります。
「O2センサーの仕組み」ページも合わせて見ると排気ガスが異常な理由もわかります。
水温センサーの故障
水温センサーは水温をコンピューターに送って燃料の噴射量を調整しています。
エンジンが熱ければガソリンは安定して燃えるので水温が上がるまでは力強くエンジンを回転させないと不完全燃焼をおこします。
なので水温が低ければ燃料を濃くして力強いエンジン回転を作り安定させます。
逆に水温が高ければ燃料を濃くしなくても安定しているので燃料を薄くして燃費を向上させます。
この水温センサーが故障して逆の信号を送ると燃料の量が合わずCOやHCが高くなります。
三元触媒の故障
三元触媒はエンジンからリヤマフラーの間に装着されている排気ガス浄化装置です。
三元触媒はCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、NOx(窒素酸化物)の3つを酸化、還元してH2OやCO2にします。
触媒の中は何層にも分かれているので、その層が割れて隙間からガスが流れてしまえばCOやHCはマフラーから排出されてしまいます。
バキュームホースの外れ&亀裂
エンジンに空気を入れる通り道にはエアーダクトやパイプがあります。
これらパイプの前に吸入空気量を測定するエアーフローセンサーが付いていますが、センサー~エンジン間でひび割れなどでエアーが漏れていれば実際の空気量が変化するのでコンピューターで管理している空燃比にズレが生じます。
下の画像はエアーフローセンサーを外している途中ですが、その右側のバンドで止めてあるホースに亀裂が入ると空燃比がズレます。
そうなると数値上では燃料の濃さは適量でも実際は薄いなど、HCを高くしてしまう原因になります。
よく亀裂が生じる箇所- エアーダクト
- ブレーキマスターバキュームホース
- ACアイドルアップバキュームホース
COとHCを下げる方法
COとHCを下げる基本は、スパークプラグの交換、エアークリーナーの交換、エンジンオイル洗浄剤、オイル圧縮復活剤、燃料洗浄剤です。
スパークプラグの効果 | 失火を減少させCOを下げる |
エアークリーナーの効果 | 燃料を薄くしてCOを下げる |
エンジンオイル洗浄剤の効果 | ピストン、バルブの動きを良くしてHCを下げる |
オイル圧縮復活剤の効果 | ピストンの圧力を回復して完全燃焼させHCを下げる |
燃料洗浄剤の効果 | インジェクターの噴射弱を回復させてCOを下げる |
次は交換ではなく、作業でCOとHCを下げる方法をご紹介します。
O2センサーを活性化させる
O2センサーは酸素の量を測定するのに300℃以上で作動するジルコニア素子を使用しています。
なのでまずはエンジンを十分暖めて下さい。
その次に3分ほどエンジン回転を3000回転に保持してO2センサーを作動させます。
そうしますとO2センサーが正常に作動して理論空燃比になるようにコンピューターに信号を発信して燃料と空気の量を制御します。
エンジンかけ始めなどO2センサーは冷えて居るので強制的に温度を上げるためにO2センサーにはヒーター機能があります。
O2センサーヒーターは下記画像のように抵抗を測定して正常か検査します。
ジルコニア素子は水に弱く、水分がつくと割れてしまい、ヒーター回路が断線します。
ヒーターが回路が断線するとフェイルセーフが働いて燃料を濃くするなど通常走行できるように燃料噴射を一定量に補正されるので燃費悪化に繋がります。
三元触媒を活性化させる
その他にもエンジン回転を上げる事で三元触媒も300℃で浄化作用が活発になるのでCOとHCを下げます。
そしてマフラーに溜まっている煤も放出される効果もあります。
どちらもどこかが故障していると意味がありません。
※エンジン回転を上げて保持するのはエンジンに負担がかかるので注意して下さい。
車検に通らない排気ガス検査の裏技
COが高い場合、バキュームホースを抜いてしまえばCOは下がります。
上図のようにインマニとつながっているバキュームホースを外す事でより多くの空気を入れる事ができるので、燃料は薄まりCOを下げる事はできます。
しかし、バキュームホースは高負荷な電動部品を作動させてもエンジンが正常な燃焼をさせる為にエンジン回転数を上げる重要な部品です。
そのまま使用すれば車にも環境にも健康にも悪く、良い事はありません。
なお適正な修理をせず無理やり車検に通すと触媒が壊れやすくなるので注意して下さい。
ディーゼルの黒煙を消す方法
燃料タンクに直接入れる洗浄剤がとても効果的です。
その他にも高速走行する事で溜まった煤が出て車検に通りやすくなります。
マフラーを外して直接洗浄剤を流し込み、その後、水で流して乾燥させて綺麗にする方法もあります。
車検排気ガス検査の重要性
排気ガス検査でエンジンの状態がわかります。
長く乗るつもりでしたら消耗品は定期的に交換するようにしましょう。
プラグ交換を節約してしまったためにイグニッションコイルが故障してO2センサーと触媒も溶けて交換する事になってしまったケースもあります。
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